小説・漫画好きの感想ブログ

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「予想どおりに不合理」 ダン・アリエリー著

 行動心理学・経済学の本ですが、これはかなり面白かったです。
 簡単にいえば、人間の心理は経済学や心理学の教科書通りには決して動かない。アダム・スミスの「神の見えざる手」や「需要供給曲線」のように、普通の人間が合理的な判断をすれば、絶対に教科書通りにそうなるような経済行動を人間は取らないというようなお話なのですが、これがね、実験に裏打ちされたデータをもとに展開されていくのが面白かったです。
 一つ例をあげてみれば、「無料」という言葉がもつ経済価値の常識を覆す力の話などは面白かったです。どういうものかといえば、ここに1000円のチョコ詰め合わせと100円の板チョコがあったとしましょう。
 これがそれぞれに半額になったとしましょう。500円と50円で売られていたとしましょう。そして、それをみんなに買ってもらうとしたら、どちらが売れると思いますか?(もちろん品質は半額だからといって変質したりはしておらず、どちらも元々の味がするものとします)
 どちらかしか選べないならば、誰がどう考えても、もともと1000円であったものが500円になった方が、なんと500円も得をするのですから、100円が50円になった50円を得したものよりも、もともと1000円だったほうを取ると予想しますよね。そう、ここまではその通りなんです。でも、これがどちらもさらに50円下げて、片方が450円、片方が無料になったら、どうなるか? 550円安いのと、100円安いのとどちらを選ぶのか? 当然、合理的な判断からすれば、1000円のほうを取ると思いますよね。でも、結果は圧倒的多数でほとんどの人はただのほうを選ぶんです。
 アマゾンの販売方法もそうで、二冊本を買うと送料が無料という風な今のシステムにしたら、世界中でどこの国でも売り上げが倍増したようです。一冊の本しか欲しくなかった人でも、二冊買うと無料となると、ついつい二冊買ってしまうのだそうです。フランスだけは、当初1フランでいったそうですが、その時は売り上げが伸びず、無料にしたらバカ売れになったそうです。
 こんな風な実験が、どんどんされます。もう一つ例を挙げると、異性の顔の好みなんて千差万別なはずなのに比較対象のやりようではそれをコントロールできるという実験とかも面白かったです。これは、どんな顔の異性とつきあうかというのを三枚の写真からえらぶという実験なんですが、三人の顔が全然違えば、選択される三人はけっこう均等になるんですけれど、この三枚の写真を、AとBの二人の人物と、そのうちの一方のBの顔を少し不細工に加工したものの三枚にすると、圧倒的多数が不細工に修正されなかったもともとのBの顔を恋人の顔に選ぶんだそうです。AとBがイケメンとハンサムの差があればわかるんですけれど、DとEとFの同じようなランクの三人の写真から、DとD'とEを選んで三枚みせたらDが必ず圧倒的人気で選ばれるようです。
 こういう常識では考えられない何かが、予測できるけれど不合理に人を突き動かしているという本で、、、かなり営業にも使えるような事がたくさんあって、活きたビジネス書としてとても優秀な本でした。
 

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

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