小説・漫画好きの感想ブログ

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「中国怪談」 話梅子編・著

 中国の短篇怪談を集めたものです。
 非常にシンプルにストレートな怪談で、奇妙な味わいがあります。自分の怨みを晴らす為に死者の身体を借りて、事件を暴いてくれるように頼む死者。騙された死んだ男が、その怨みを晴らす為に地獄の官吏に訴え出て現世に現れる男。死んだあとも愛しい初恋の人にあうために、現世に舞い戻ってきて夫婦のように連れ添う女。仙道の修行をする男たちが行っている無言行を邪魔するために現れる何が見せる幻の恐ろしさ。いずれも、日本の幽霊妖怪談とは趣きが違い、味わいがあります。
 幽霊一つとっても、文化というのはあきらかに違うのだなぁと不思議な感慨さえ覚えます。
 たとえば、あちらの幽霊たちは恨んでいるからといっていきなり現れることはありません、地獄なり死後の世界の神様や天上界の王様に訴えでてから現世へと現れ、怨みを晴らす、もしくは現世の権力者を使って無念を晴らそうとします。また、誰かの名を直接名指しせず犯人の名前などを童歌のように唄や詩の中に折り込んで世の中に出したりします。そのあたりがいかにも中国的であることだなぁと思います。
 特に甦る女性の話。死んでも本当に好きな人のもとには、生きた姿として甦りそのまま仲睦まじく暮らすという話が多いんですが、日本だとそれは牡丹燈籠のように、怪談となり男はとり殺されそうになるし、他人が見るとその正体は腐乱した死体や白骨化した死体なのに対し、あちらの中国の話だと甦ってきた女性はしっかりと男性と何年も暮らすし、正体がばれたあとで墓を暴いても死体は死後数十年たっても生前そのままの姿であったというのが多いのはいかにも中国っぽいです。

中国怪談 (角川ホラー文庫)

中国怪談 (角川ホラー文庫)