「KAIKETSU! 赤頭巾侍」 鯨統一郎著
鯨統一郎さんの新作です。
今月は鯨統一郎の特集月なのか、文庫で三作新作が出ておりまして、これがそのうちの一冊です。書店で鯨さんが何冊か並んで平積みになっていることを見る日が来ようとは、、という感慨をもって読みました。鯨さんのファンだというと、「え?」と眉をひそめられること幾星霜。あれってバカミスの人でしょ? とか。ネタものの人でしょ? とか。あんなの読むって、本当にミステリ好きなの? と言われること十数度、いつしか隠れキリシタンのように鯨さんの本はこっそり読むもののような風潮になってはや幾年。こんな風に本屋で何冊も平積みになる日がくるなんて。。。。
と、大仰な前振りをしてみたものの、感想は、いたっていつも通りの鯨統一郎さんでした。
主人公は津無時円風流の伝承者、久留里一太郎。彼は寺小屋の先生として生計を立てつつ、親の仇の剣法家を追いかけて江戸で暮らしている。しかし、仇持ちとはいいながらも、本人はいたって粗忽者でおっちょこちょい、しかも義憤にかられると悪人を成敗しに自慢の剣をもって走り出してしまう直情径行型の人物。そんな彼に思い込みで下手人を伝えてしまう瓦版屋のせいで、彼は下手人を斬り殺した後で、実は犯人はその人物ではないのではということを八丁堀の旦那に教えられる。かくして一太郎は普通の主人公とは逆に、犯人を斬り殺してから、その犯人こそが真犯人だったという為のトリック崩しをする羽目になるという一風かわったお話。まぁ、なんというか鯨さんらしいです。話を書いたあとで、さて、トリックをどうしようか、といったような感じです。でも、この脱力感が鯨統一郎さんなんだなぁ。
BLファンに向けてか、主人公に対して「お主を好きになってよいか」なんて台詞を口にする衆道の八丁堀の旦那なんかも登場もしたりして、ファンにむけてのサービスも忘れずにいます。
また表紙は今回もまた唐沢なをきさん。鯨統一郎さんと、唐沢なをきの絵は無敵のコンボというかどちらがどちらだったかわからないくらいにしっくりと必然のような組み合わせです。この表紙にも納得です。
- 作者: 鯨統一郎
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2009/01/06
- メディア: 文庫
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