小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「ZERO ゼロ傑作選 応酬の至宝」愛英史・里美桂著

 ひさびさの漫画紹介でしょうか。
 こちらは、蘊蓄漫画・芸術部門です。基本的には「王様の仕立て屋」だったり「美味しんぼ」だったりといった蘊蓄漫画好きなんですが、この「ZERO」は芸術系で主人公のゼロは「神の手」をもつ贋作者。贋作で芸術系といえば細野不二彦さんの「ギャラリーフェイク」なんかが浮かびましたが、あちらはギャグも入っていたし、主人公の藤田はサーキュレーターで贋作者であるのは同じでも、その贋作範囲は絵画のほうにもっぱら限られていましたが、こちらの主人公・ゼロは依頼者が要望すれば絵はもちろんのこと、ガラス工芸でも陶器工芸でもなんでもやってしまいます。しかも、依頼の報酬はたいていがその人の全財産。ある意味ブラックジャックばりのふっかけ方をしていくキャラクターです。
 でも、その作るものに関して言えば、完全にオリジナルと同じ物。素材から何から全てにおいて同じ物を作り上げてしまいます。しかも元があるものだけに限らず、既に失われてしまった誰も見たことのないもの、もし作ったとしたらこうなるものといった想像のものまで含めて完璧なコビーを作り上げてしまいます。ある意味、荒唐無稽です。だって、既に死んだ誰かになりきってその人の人生に入り込んで誰も見た事もないものを「これだったはずだ」と作ってしまう事もしばしばですから。
 でも、この無茶さ加減と、絵のタッチの良さが、良い意味でアート版の「ゴルゴ13」みたいで面白いです。今回紹介しているこれは、たくさんでているZEROのシリーズからより抜きした傑作選です。ZEROシリーズに手をつけたものかどうか迷う人にはちょうどいい体験版です。