小説・漫画好きの感想ブログ

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居眠り磐音江戸双紙シリーズ「照葉の露」 佐伯泰英著

 居眠り磐音シリーズ「照葉の露」、シリーズ最新刊です。
 ひさびさにしっとりと落ち着いた人情物の風情の強い一冊です。今回は、大きな話が一一本ではなく、緩やかに連作になっているものの独立した話がいくつか入っていて、たまにはこういうのもいいですね。
 一本目は、酒乱の父親を事故で殺してしまった妻と武芸師範代を追って、息子と磐音が敵討ちに出る話。やむにやまれぬ事情と、それでも家の存続のためにまだ子供ながら敵討ちにでる息子との交流を描いた話で、今までのシリーズの中にはちょっとなかった作品。
 二作目は、竹村武佐衛門がいよいよ武士を捨てて、再就職する話。前巻でいよいよ食べて行く為に武士を捨てることを決意していた竹村さんですが、やはり口に出してはいわないものの色々思う所あり、それでも家族のために新しい道を踏み出す彼のために磐音と品川さんが友情を発揮する話。こういうもって行き方しかなかったんだろうし、不満もないけれど、貧乏剣士三人も思えば遠くへ来たものだと感慨深くなる話。
 もう一つは、でぶ軍鶏こと利次郎が父とともに四国へと一時的にてせすが旅立つ話。これも、長い長い大河物語のようなストーリーの中での変化で好ましい話でした。
 時代劇スペシャルのような勧善懲悪の部分が今回はなく、時の流れを感じさせるしっとりとした色合いの一冊でした。
 

照葉ノ露 ─ 居眠り磐音江戸双紙 28 (双葉文庫)

照葉ノ露 ─ 居眠り磐音江戸双紙 28 (双葉文庫)