小説・漫画好きの感想ブログ

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「環境活動家のウソ八百」  リッカルド・カショリーニ&アントニオ・ガスパリ著

 これもしばらく前に読んだ本になります。
 環境問題はウソばっかりだという、アンチ環境問題、アンチ地球温暖化理論の方の本です。基本的に自分は、エコの活動家なので(というよりは仕事柄エコの布教活動家なわけで、、とくに最近ではアトピーとエコロジーの絡みからの仕事もしているので確実にスタンスはこちらにあります)、環境問題は重要だし地球温暖化に対しては真剣に取り組まなければならないとするスタンスをもっています。しかしながら、だからといって、そちらばかり読むんじゃなくて、正しい事実はどうなのか?  反対意見の中にも組むべき意見はないのか? と見ることは大事だと思っているのでそちらの意見の本もよく読みます。でないと、お客さんにとって真摯でないと思うからです。
 そんなわけで、この本を手に取った訳ですが、これがね、実に馬鹿馬鹿しいというか結局のオチは宗教論的な独善にはまり込んでいくものだったので、逆に笑ってしまいました。地球温暖化対策なんて単なる偽善エコロジーだとおっしゃる武田邦彦さん(ある意味、反CO2削減の旗印的人物ですよね)の推薦本ということで、けっこう真剣に読み始めただけに、がっかりでした。
 余計にがっかりだと思ったのは、この本、中盤くらいまでは結構読ませるんですよ。マーケティングと本としてのテクニックが完璧で、まず普通に当たり前だと思っていることに疑問をもつところから話を始めていって、歴史的事実を積み重ねていく中で徐々に選択的な情報を出していって、あたかもこのエコ活動や地球温暖化対策の活動というのは、結局は非常に歪んだ理念をもつ団体や思想グループの陰謀で、そのルーツはユダヤの優生学の思想や、巨大な利権集団や財閥(ロスチャイルドの陰謀?)が自分たちの権益を確保するためにでっちあげたものだというような話に思い込ませていくくだりはなかなか秀逸で、歴史的な事実の一部分だけを取り出して、それと違う側面や、反対の事実には触れずに理論を組み立てていく様はそういうテクニックを知らなければ、かなり説得力があるように聞こえるだろうし、中盤までは本当に読ませるんです。自分も反対陣営に所属していながら、結構真面目に読んでいたくらいです。
 しかし、、、途中でアメリカがこの地球温暖化についての世界的取り組みに「京都議定書」をはじめ参加せずにむしろ逆方向に行ったことを肯定的にとりあげるあたりから疑問符が少しずつ増えてきて、中盤以降では森林破壊は本当は進んでいないとか、種の消滅なんて本当は起こっていないとか、遺伝子組み換え食品こそが人類を救う、環境を改善するにはさらなる開発だというようなあたりで明らかにプロパガンダになっていってしまい、このあたりからはもう読むにたえません。しかも、何を思ったのか、最後のほうではこの世はキリスト教の神が作った世界であるのだから自然も人間もともに神に作られたものであるから問題がおころうはずもなく、自然は人間が使うべきものでありその管理に責任をおうもので自然のままに置いておくものではない、テクノロジーは自然を汚しもするが神が作った人間のつくったテクノロジーである以上は、テクノロジーでそれは解決できるはずであるという、信仰がすべてのベースである論理が展開されていきます。その中では地球を一つの生命体であるというガイア思想であったり、種の保存という行為は異端であるとも断罪されます(そう考えると、人口抑制が結局はエコロジーの陰謀という話も「生めよ増やせよ地に満てよ」というキリスト教的な思想から来ているのかと納得です)。つまりは、理屈がどうで事実がどうでという話ではなくて、結局、反エコロジーの基盤がキリスト教とアメリカの上層部のアンチプロバガンダだったという話がわかるのがこの本なのです。
 僕からするととっても不思議なんですけれど、これが裏情報だったらまだわかるんだけれど、そのまま本文の中にそれが書かれているんですよ。だから、たぶん、日本人で(というよりはキリスト教信者でなければ)、普通の感覚があれば、最後近くまで読むと「えー」とげんなりして逆効果だと思うんだけれど、どうなんでしょう? 武田さん最後までちゃんと読んで推薦したのかなぁと不思議に思うくらいです。
 極めつけには、この著者の二人の経歴、二人ともバチカン教皇庁の大学教授なのですよね。この経歴で、内容で世界が納得すると思うのはキリスト教の絶対性を信じる信仰心の厚さなのか、それとも傲慢さなのでしょうか。
 一応、最後にとってつけたようにグリーンピース攻撃の話が出て来ますが、これも結局はそのキリスト教的な思想からすれば、クジラに神性を与えたような行動や、生き物に優劣をつけることが異端だという話だったりするわけで、、まぁそんな感じでネタとして読むにはいいですが、真面目に取る人もいないかと思うような本でした。

環境活動家のウソ八百 (新書y)

環境活動家のウソ八百 (新書y)

  • 作者: リッカルドカショーリ,アントニオガスパリ,Riccardo Cascioli,Antonio Gaspari,草皆伸子
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2008/08
  • メディア: 新書
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