小説・漫画好きの感想ブログ

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「退屈姫君 これでおしまい」 米村圭伍著

 退屈姫君伝のシリーズ完結編。
 「風流冷飯伝」を含む「退屈姫君伝」のシリーズもこれで本当におしまいです。徳川家治統治下の江戸を舞台に、陰謀家の田沼意次と戦う話を軸に面白おかしく続いていたシリーズもこれで本当におしまいです。
 それだけに今回はアクションや智慧比べなど全てにおいて見せ場たっぷりの盛りだくさんな物語展開に加え、今までに出て来たサブキャラ達一人一人にも見せ場が作られるというファンサービスの面もたっぷりなお話となっております。ただ、あらすじとしてだけ見ると、江戸で大流行りだった菊の品評会を軸に物語は展開していくのですが、ストーリーそのものはわりと一本調子で、もしこの本がこのシリーズの初読みだったらイマイチだったかも知れません。ただ、今までの各巻を読んできた人ならばしっかり楽しめるものになっていると思いますので、そのあたりはあんまり関係ないかも知れません。

 あと、ちょっと面白いなと思ったのは、物語の冒頭で別の江戸時代劇をもじった台詞があるところ。地の文でのパロディなんですが、、
 「めだか、大変だ。天下の一大事だぜ!」
 と退屈を持て余すめだか姫のところにお仙が飛び込んでくるのに対してめだかの台詞に
 「ごめんなさい、お仙さん。わたくし、諏訪の胎教につきあって心静かな暮らしをしなければならないの。他をあたってくださいな。そうそう、なんでも日本橋通町に妖を操る若旦那がいるという噂だから、そちらに頼んでみて」というのがでてきます。
 そうです。これ、畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズの若旦那ですね。こういうお遊びについ嬉しくなってしまいました。

退屈姫君 これでおしまい (新潮文庫)

退屈姫君 これでおしまい (新潮文庫)