小説・漫画好きの感想ブログ

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「キマイラ」5巻 夢枕獏著

 本年385冊目です。
 紹介の中身がずいぶんと飛んでしまっているのですが、、、キマイラの二冊1セット組の新装版の五冊目です。昔の今はなきソノラマ文庫版でいえば、9巻の「狂仏変」と10巻の「独覚変」がセットになっている一冊です。
 あらすじとしては、キマイラ化してしまった二人の主人公、九鬼麗一と大鳳吼をもとの人間に戻すべく二人の周囲の人物たちがそれぞれの出来る範囲で動き回る話、といえるでしょう。二人の本当の親である巫炎が亡くなり、二人がどうしてキマイラ化するのか、二人の血にはいったいどんな因縁があるのか、の謎は持ち越してしまいましたが、久鬼は狂仏(ニョンバ)と呼ばれる異形の半ば怪物化したチベット僧から人間へ戻るための訓練を受けるために血を流し、大鳳は円空山に戻り突いたものの未だキマイラ化した身体のままで九十九や雲斎が月のチャクラという謎の言葉とソーマを手がかりにキマイラ化をとめる為の方法を調べに各地へと散っていきます。
 この物語、連載スタートから20年を経ているのにまだまだ終わりが見えず、このあたりの巻でもまだ謎の一部たりとも見えてはいません。それなのに、物語はこうした伝奇小説的な謎を中心に、「とにかく強くありたい。世界最強の強さを追い求める」格闘小説としての肉体的な熱と質量をもつ物語がそれだけで成立するくらい強く熱くうねっているし、また同時に若い世代の主人公ならではの純情な恋愛小説としてもテンションは高いままに話が進んでいるし、まことに骨太で重層的な飽きさせない小説です。物語自体が成長しているというのが正しいのでしょうか、行き着く果ても見えず、勢いがどんどん増していく、そんな感じがする小説です。
 そのうち、以前刊行されていたところまでこの二冊一組版が追いつくでしょうけれど、その時には新しい話も読めるのでしょうか。とても先が楽しみです。

キマイラ 5 狂仏変・独覚変 (ソノラマノベルス)

キマイラ 5 狂仏変・独覚変 (ソノラマノベルス)