小説・漫画好きの感想ブログ

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「城のなかの人」 星新一著

 よく考えたら朝からご飯を食べていなかったことに気がつき、さりとて今からごはんを炊いたりおかずを作ったりするような気分にもなれず、ケーキとコーヒーで簡単に(いやいや簡単だけれどカロリーが高いような気もするが、、、今日はこれだけしか食べてないんで大丈夫でしょう。明日は絶対に野菜を食べないといかんなぁ、、、こういう時に山形県のあけびがあれば、、)。さて。こちらも紹介が遅れていた本。
 「城のなかの人」
 タイトルと表紙イラストだけ本屋さんで見たときにはてっきり違う作家さんの本だと思ったわけですが、よくよく見れば星新一さん。あのショートショートの神様の星さんの本でした。
 珍しいなぁ・読み落としてるなぁと思いつつ、手に取ってみると、時代小説だし短編小説だしで珍しさも手伝って一気に読んでしまいました。
 都合五篇の短篇が入っており、由井正雪小栗上野介などが主人公だったりします。
 表題作の「城のなかの人」の正体は、豊臣秀頼。秀吉の遺児で、大阪冬の陣・夏の陣を経て淀君とともに滅んでいくあのお方です。脇役になることの多い彼をメインにもってきてどんな話にもっていくのかと思いきや、これがまた歴史小説にありがちな権謀術策蠢く世界や、大上段に振りかぶっての歴史絵巻的な要素は一切排した淡々としたタッチで、こういう表現が適切かどうかは微妙ですが、とてもクールな感触の話になっています。
 生まれた時から、麗しいもの、美しいもに囲まれて育った秀頼は、あるがままの運命を受け入れ、利発で賢い少年に育つものの、世の中の理がわからないうちに時が流れていきます。それなりに彼個人としての成長や欲望や諦観なども描かれますが、それもどこか突き放したような、一歩引いたようなタッチと内面描写が続きます。 
 ある意味、とても異色な歴史短編小説になっています。
 いい悪いではなく、やっぱり、星新一星新一という一つのジャンル・スタイルのカテゴリーになるんだなぁと変なところで納得した一冊でした。薄いのでさくっと読めますよ。
 

城のなかの人 (角川文庫)

城のなかの人 (角川文庫)