小説・漫画好きの感想ブログ

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「チャイルド44」下巻 トム・ロブ・スミス著

 話題の「チャイルド44」の下巻の感想です。
 上巻を読んでいない人からするとネタバレになる部分があるので気をつけて下さい。
 さて、ストーリーのあらすじでいえば、上巻で保安省から降格され地方の民警の一巡差に降格され、あらゆる栄光や特権や生活待遇をも奪われた主人公のレオが、妻のライーサとともに政府からは存在すら認知されていない連続殺人犯であるアンドレイへと執念の追跡をするのがこの下巻のあらすじとなります。が、それではただの特殊な背景設定でのミステリということで、ここでは更に二つの要素が追加され、その二つによってこの「チャイルド44」は近年稀に見る傑作となっています。
 一つは、捜査の実質的な相棒となるのが、愛憎入り乱れるという表現がぴったりの妻ライーサとなる点。物語前半ではただの美しい妻でしかなかったものが、中盤でスパイ対象となり、更に進んでは自分を裏切ったものとなり、ついには一旦は破局となったのが、あくまで対等のパートナーとして一緒に行動するようになる(ある意味では妻なしではレオは何もできなかったか、そのまま廃人になっていたのではとさえ思われます)というのが素晴らしく良かったです。女性って強い、みたいな単純な言葉では片付けれない強さがあります。
 もう普段の生活が極限生活のような国ですから、その中で逃亡者のようになりながら信念のために真犯人を追いかけ続ける、その為にはありとあらゆる事を二人でやっていく姿はなかなかに素晴らしかったです。
 あと、もう一つは、最初のほうにネタフリがされているんだけれど、犯人と主人公の関係。ミステリでありがちといえばありがちなネタではあるんだけれど、ここであえてそれを持ってくるところでいかようにも読み手に犯人の犯罪の意味やレオが何故この事件に拘ったのか解釈の余地を多数与えるという点で評価したいなと思います。
 ということで、「チャイルド44」読んで良かったです。最後の最後の犯人逮捕後のあれやこれやについてはたぶん賛否両論あると思うし、個人的にはレオとアンドレイの一騎打ちの結末は全く違う形でも良かったのではないかと思ったりもしますが、全体的に見たら好評価されてしかるべき作品かと思いますので、5の4でプッシュしたいと思います。

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

 さーて、次の海外ミステリは、イアン・ランキンものをポケミスでおっかけるのか、それともぼちぼち出るであろうローレンスブロックのマットスカダーものの文庫版をいくか、迷うところです。