小説・漫画好きの感想ブログ

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「王道の樹」 小前亮著

 中国の後漢が滅んで出来た晋が中国を統一したものの、再び分裂、中国の各部族がそれぞれに国をたてた群雄割拠の五湖十六国時代の物語(早い話が三国志のあとで司馬懿の一族が晋という巨大国家を作ったものの分裂、民族ごとに国が建国されて戦争ばっかりしている時代)。
 そういう時代背景のもとで、地方の一政権の若き王である苻堅が、理想国家建設にむけて邁進していく物語。主人公はもちろん、軍師である王猛、鮮卑族のボヨウスイなど実在の人物が登場しています。このあたりの時代の歴史史実に詳しくないので、どこまでが虚構でどこまでが事実なのかはわかりませんが、ちょっとダイジェスト版過ぎるかなぁというのが正直な感想。一代記を一冊の本にしているんだから、長さ的には十分にあるはずなんだけれど、どうにも表層的なところだけを浚っていっているような気がします。強烈なライバルがいたり、内面を掘り下げる描写が少なかったからか、よくも悪くも主人公が平板に見えます。
 事績的なことを見れば、理想に燃えて本当の意味での五族共和的なものを目指していた苻堅のような人物は個人的に好きです。というより、こういう人になりたいなあ、こういう人に浮かばれて欲しいなぁという気はするのですが、中国ではこういう人が何かを成し遂げるというのはなかなかに難しいようです。
 小前さんといえば、先日文庫で「李世民」を出していたかと思うので、もう一冊ほど読んでみたいと思います。
 

王道の樹

王道の樹