小説・漫画好きの感想ブログ

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『第六の大罪」 栗本薫著

 キリスト教でいうところの七つの大罪の一つ、暴食(ブラッド・ピットの「セブン」のテーマにもなっていましたね)をテーマにした四遍の短篇推理小説です。主人公は、栗本薫の人気シリーズの伊集院大介で、このシリーズの文庫最新刊になります。
 この伊集院大介のシリーズは、巷では最近の作品になればなるほどキレが悪いという風評もあったので、実際どんなものだろうと思いながら読みました。結果として言えば、最近の他の栗本作品にも見られる冗舌さが、確かに初期作品からするとかなり目につきます。描写や説明にもくどさが目立ちます。ただ、一つのテーマで4つほどの短篇をうまくまとめる力量は流石に侮れません。一つ一つの作品それ自体は、ものすごく斬新なものでもなければ、ミステリとしての詰めも甘いし、オチとしてどうかなというのもあるんですが、軽く読むミステリとしてのレベルには十分に達しています。
 (ただし、最初の第一作に関してはあまりにもやもや感が残る幕切れですし、?? な出来ですが)
 こなれているというか、スタイルとして成立しているというか。ただ、あくまでのんびり読むタイプのミステリになっていますので、謎解きの妙だったり、緊迫した駆け引きや、行き詰まる犯人との対決というのを期待して読むとものすごく裏切られますのでそのあたりはご注意。 

第六の大罪 伊集院大介の飽食 (講談社文庫)

第六の大罪 伊集院大介の飽食 (講談社文庫)