小説・漫画好きの感想ブログ

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「頭蓋骨のマントラ」  E・パティスン著 

 引っ越しを前に片付けていたら出て来た本。
 あまりの懐かしさに手にとったら、そのままずるずると読んでしまいました。オリンピックの前にこの本のことを思い出して(なにせ舞台がチベットの中国の刑事物なんで)いましたがその時は出てこなかったのに、こういう何気ないときに本ってひょっこり出て来ますよね。さて。
 読み返してみましたが、この本は、やっぱり面白かったです。簡単に説明するとチベットが舞台
のミステリで、中国人の元刑事・単が主人公。彼は、政治犯(といってもたいていは僧侶たちが入れられている)刑務所に無実の罪で服役中だったのですが、刑務所の中で殺人事件が起こった事で、臨時の捜査官に駆り出されます。しかし、中国的な官僚主義というか非能率なシステムのせいでなかなか捜査は進まないし、軍だの共産党内部だの現地部隊だの各勢力がそれぞれの思惑で勝手に動いて大変難航します。
 実際、ストーリーはかなり複雑で、上下巻の二巻組なのに、なかなか感嘆には事件の全体像をこちらに予想させずでした(間抜けな事に自分はすっかり忘れていた)、たぶん皆さんも僕や主人公の「単
」同様に解決に頭をかきむしることになると思います。
 もっとも、それには日本では馴染みの薄いラマ教(特殊な仏教)の話がたくさん出て来るせいかも知れないんだけれど、これは本筋に大きく絡んでくるので必要なことですし、異国情緒を醸し出すのにもかなり役立っているので必要悪で仕方ありません。あとは、そうですね、ダライ・ラマ絡みのことで、作者のちょっとした表現や描写が中国に対して厳しすぎるかなぁと前に読んだ時には感じたんですが、こないだの北京オリンピックのときのことやチベットの暴動を見たあとでは、これくらいのことは必要かと思いました。
 今、店頭で手に入るかはちょっと微妙な作品ですが、中国のミステリとかが好きな人にならお勧めです。

頭蓋骨のマントラ〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

頭蓋骨のマントラ〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)