「マニアックス」 山口雅也著

　山口雅也のジャンルを超えた短編集。
　マニアックスというタイトル通り、少し狂信的だったりパラノイアだったり人格破綻者だったりが続出する短編集です。自分の好みからすると、ちょっと面白くなかったです。それぞれにマニアック素な人物が出て来て、テーマには沿っていますし、ひねりが効いたものもあるのですが個人の好みでいくと今ひとつピンとくるものがありませんでした。
　山口雅也の作品といえば、自分の中ではパンクの探偵たちが活躍する「キッドピストルズ」のシリーズと、死者が次々と甦る世界でのミステリというアクロバティックな離れ業でありながら完成している「生ける屍の死」という大傑作がミステリがまず頭に浮かびます。それだけに、読むにあたっての期待値がちょっと高すぎたかも知れません。
　都合七篇ある作品の中では、最初の作品である「孤独の島の島」という作品が自分は一番好きで、このレベルの作品が揃っていれば評価はもっと高くなったと思います。この作品だけは、そこはかとない捉えどころのない恐怖と、人の狂気がうまいバランスで描かれているだけに残念です。

マニアックス (講談社文庫)