小説・漫画好きの感想ブログ

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「カブのイサキ」芦奈野ひとし著

 今年349冊目の紹介本です。
 「ヨコハマ買い出し紀行」の方の新作漫画です。 
 今回も舞台設定はきわめてSF的で、なんの説明も、原理もあきらかにはされていませんが、世界の陸地が10倍化してしまった世界を生きる人間たちの話です。前作「ヨコハマ買い出し紀行」では海抜がどんどんあがっていって、陸地がなくなる未来に生きる人々の世界が描かれていましたが、今回は動植物や土地、山、東京タワー等が10倍の大きさになった不思議な世界が舞台です。
 10倍の大きさになったということは、当然、距離も10倍になったということで、異常に広くて
土地の移動には飛行機がないと何にもできないような世界、が舞台です。もちろん、常識の物理世界で考えれば10倍に大きくなるということは、体積でいえばタテ×横×高さの1000倍の体積になるということを意味するわけですが、地球がそんなことになってしまうとどうなるのか、質量の増大がなければ密度的に重力がまともにたもてないような気もするし、それだけ拡散してしまうと質量がついていくとそれはそれでとんでもない世界になっているような気もするわけですが、、まぁそのあたりは置いといてかなり変わった世界だというような理解だけさせて話は進んでいきます。
 主人公は、イサキという少年と、彼に飛行機を貸してくれる女商人のシロさん、そして妹のカジカの三人。彼ら彼女らが空を飛びながらいろいろな土地に行ったり、話をしたりするのがたんたんと描かれています。
 ヨコハマ買い出し紀行の時もそうでしたが、この作者はたんたんと、ゆったりとした時間を、描くのが凄く上手くて、現実がすーっと音をたてて消えていくような不思議な感覚が味わえる漫画を描く人です。この雰囲気を良しとするか、それとも何か動きがなくて面白くないと思うかでくっきりと評価は別れるかも知れません。個人的には、こういう空気の薄い感じの漫画も好きです。

カブのイサキ(1) (アフタヌーンKC)

カブのイサキ(1) (アフタヌーンKC)