小説・漫画好きの感想ブログ

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「国境の南 太陽の西」 村上春樹著

 ジョン・ウー監督、金城武チャン・イーモウアンディ・ラウ「LOVERS」を見ながら打っています。素晴らしい映像美と意外な展開に見とれていましたが、途中からアンディラウが升毅に見えて仕方がなくなってしまって、一度見始めるとどうしてもそう見えて。。。情けないとこなんかが特にそっくりに見えて、、でも、あれは怒るよね。そりゃあ3年待って、あの仕打ちでは、、ストーカーにだってなろうというものです。
 ま、それはさておき。
 「国境の南 太陽の西」です。
 もうかれこれ5回目くらいの再読です。ときどき村上春樹さんの、読むだけで心地よい文体を味わいに読んでしまいます。この作品は、村上春樹作品の中でもちょっと異色の作品で、あらすじからして、初恋の人との再会と家族との生活のどちらを取るかみたいなことがメインストーリーになっていて、ちょっとそれまでの村上作品とは大きく違いますので、読んだ感覚というのもいつもながらちょっと違うんです。たぶんに感覚的なことなんですけれど、ものすごく苦悩が伝わってくるというか、自覚していてもどうしようもない欠落みたいなものが伝わってきて、読んだあといつも深いため息をついてしまいます。←だったら読むなと突っ込まれそうですが、それであっても読んでしまうほどに吸引力がある作品でもあります。
 主人公は一人っ子であるという事に小さい頃は引け目を感じていましたが、それ以降の人生でいえば、どちらかといえば失敗もなく、のめりこめなかった最初の仕事もいい流れで変えれて、仕事の上でも結婚、子育てともに順風満帆に進んでいて、何の不満も不幸の影もない人生を送って行きます。それがもうあと少しで40になろうという時に、小学生のときに仲良くしていた初恋の女性、島本さんに出会ってしまったが為に彼女の事しか考えられなくなり、全てを捨ててでも彼女を欲しいと思うようになります。
 彼女に「私には中間はない」「私を取るか、それとも取らないか。取るんならあなたの全ても取るよ」と不倫なんていう生易しいことではすまない怖い質問をされるのですが、それに対して主人公がどう答えるのか、そしてそれがどういう事態を産むのか。たぶん未読の人が読んだら「え?」という結末だと思うんですが、これがけっこう深いなと思います。最初に何回か読んだときは好きな結末ではなくて、むしろ物足りなさを感じたのですが、今回の再読ではこういう結末であることがそれこそ島本さんにとっての希望通りの展開であったのではないかなと思ったりもしました。
 このあたりは完全にネタをわってしまいかねないので、曖昧な表現しか出来ませんが、そんな風に感じました。