小説・漫画好きの感想ブログ

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「ヴァムピール2」  樹なつみ著

 樹なつみの吸血鬼漫画の2巻です。
 この世には、人の死体に取り憑いてその人の身体を使い命を永らえる流動生命体のヴァムピールという存在があった。彼らは人の精気を吸って生き続ける存在で、いわゆる吸血鬼とは違うものである、という設定で描かれるこの漫画。いよいよ、主要登場人物が出揃いました。
 事故で一瞬死んだものの、直後に「男爵」というヴァムピールが取りついたために不死者となり、生者でも死者でもない特異体質者となった水沫。彼は、その結果、幽霊が見えて触れるようになっただけでなく、サイコメトラー能力を持つようになった。また、彼の家の隣に引っ越して来た転校生の美少女の笙、彼女も水沫と同じく4年前に死んだが別のヴァムピールに取り憑かれている。彼女に取り憑いているカンタレッラというヴァムピールは、狂気を秘めた歪んだ人間の魂が好物で、それを喰らうことを愉しみにしている。その笙の生前の知り合いで臨床心理学者の碓氷。彼はごく普通の人間に見えるが、ヴァムピールに取り憑かれた人間の身体に溜まっていく毒を中和する(中和されなければ取り憑かれた人間はやがてその毒で本当の死を迎える)、「浄める者」でもあった。
 身体をもたないヴァムピール、不死者、浄める者、通常の人ではない存在が揃った時点で物語はここからが面白くなっていくのだと思います。逆に言えば、この二巻のところまでは、キャラクター紹介のための物語だったということです。さすがにベテランで、ここまではここまでで十分に面白かったので、それとは気付かずでしたが、そういうことでした。
 で、この二巻途中からがいよいよ本編なんですけれど、ここではまた新しい彼らの秘密が提示されます。それはミックスという新しい概念です。これ以上は読む愉しみを削いでしまうので割愛しますが、物語としての展開の上にどんどん新しい要素を積んでいくのが上手くぐいぐい気持ちよく引っ張られていきます。と同時に、媒体誌を意識した少年向けの展開のツボを押さえているなぁとも思います。ともあれ、新機軸の吸血鬼物語、1巻ではまだまだ様子見でしだ、2巻を読む限りどんどん面白くなっていきそうです。

ヴァムピール(2) (アフタヌーンKC)

ヴァムピール(2) (アフタヌーンKC)