小説・漫画好きの感想ブログ

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「魔術師」(上) ジェフリー・ディーヴァー著

 ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズの文庫版では最新刊です。ハードカバーの方では「ウォッチメイカー」など更に数作でています。このシリーズは、過去の事件で、左手の指一本以外の四肢がまったく動かなくなった究極の安楽椅子探偵リンカーン・ライムと、その助手として活躍するモデル並みの美貌とスタイルをもった婦警のアメリア・サックスが活躍するもので、毎度毎度ライムと犯人の智慧比べとどんでん返しの応酬が続くのが楽しいシリーズです。
 今回の敵は、イリュージョニストと呼ばれる魔術師です。いわゆるマジシャン、手品師と同じ事も出来ますがもっと大掛かりな大脱出やら物を消したりのトリックを使うタイプ、例えばディビッド・カパーフィールドやら、ゼロやら、引田天功、プリンセス天功などがこれらのタイプにあたります。
 そして、今回の敵の魔術師は、全てのマジックを使いこなす上に変装の達人で、現場から別人に成りすまして逃亡するのは勿論、被害者や目撃者の証言はまったく意味をなしません。また、手錠は簡単に外すし、すべてのドアはデッドボルトのものでさえ数十秒であけてしまいます。そうした特殊技能をもつ連続殺人犯に挑むライムたちのチーム。攻防は一進一退の様相を呈して、犯人を確保したと思いきや逃走され、ついにはライムの寝室にまで魔術師は現れるまで反撃をしてきます。
 ということで、ちょっとマンネリ化していたシリーズですが、今作はいい意味で設定に無理がなく緊迫感をもってストーリーが展開されます。下巻もこの調子でいってくれたら、シリーズで一番の傑作となるかも知れません。

魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)

魔術師(イリュージョニスト)〈上〉 (文春文庫)