小説・漫画好きの感想ブログ

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「ベルセルク」33巻 三浦建太郎著

 ベルセルク、最新刊です。 
 ほぼ1年ぶりの新刊です。ヤングアニマル本誌の連載がずーっと止まったままなので、ずいぶんと間が空きました。で、今回のベルセルク33巻のあらすじは、ひとえに、次の巻へのネタフリです。事実上のお話は前巻の32巻で終わっていて、主人公のガッツたち一行は妖精の国へと向かいつつあるものも、物語の本筋からするとそちらはあくまでサブの動き、本命はグリフィスとガニシュカ帝の戦いへの導入です。かたや、鷹の団のリーダーにして実は魔物の神となっているグリフィスと、かたや本性は魔物で「使徒」であるにも関わらずクシャーンという一大武力帝国を率い、中原に侵攻・各国を蹂躙しているガニシュカ帝。この二人、考えてみればどちらも本性は人間ではなく、人間にあらざるもの、魔物に転生したものであるにも関わらず、人間の部下、魔物の部下の大軍を率いて戦います。
 しかも、グリフィスは法皇の庇護を受け(法皇たちはグリフィスのことを天の御遣いの、汚れなき天使のように思っています)るというキリスト教的な神の味方のように認識され、ガニシュカ帝はインド的やイスラム的な雰囲気の絶対的な力の体現者として、代理宗教戦争のような雰囲気をまわりに与えつつ、激突することになっていきます。
 本当はどちらも神など信じていない、むしろ魔物であると自覚している存在であるのがなんとも皮肉な話です。しかし、それも、次巻の始まるまでの話、この巻のラストまでの話。次巻でこの二人の激突が始まった瞬間から、このベルセルク世界の人間は、人間を中心にこの世界が存在していると言う無意識の前提が崩れる瞬間に立ち会う事でしょう。
 きわめつきのダークファンタジーであるベルセルク。次巻では一体この両者がどのような戦いをするのか、人間世界がどんな風に崩壊するのか、とても楽しみです。と同時にそんなところまで進んだ話の中で主人公であるガッツに何ができるのか、物語の本筋にガッツ達の一行が帰って来た時に,彼らに帰るべき場所は残っているのかと心配になるような状況です。
 物語の流れからしたら、この33巻がインターミッションとしての巻だというのは重々承知なのですが、この巻だけでは満たされません。一日も早く次の34巻が読みたくなるばかりです。

ベルセルク 33 (ジェッツコミックス)

ベルセルク 33 (ジェッツコミックス)