小説・漫画好きの感想ブログ

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「柳生陰陽剣」 荒山徹著

 一言でいえば、一級エンタメ伝奇時代劇です。
 柳生一族の剣士にして、母方の血をひいた陰陽師でもある柳生友景(柳生宗矩の兄弟)が、朝鮮妖術師たちから日本を護るためにかつての仇敵の崇徳院上皇の一命を受けて彼らと戦うというあらすじで、かなり面白かったです。 
 柳生新陰流の達人であるだけでなく、安倍晴明の末裔であるところの剣士、友景のキャラクターが実にかっこよく魅力的で、それが或る時は陰陽の術を使い、或る時は柳生の剣術を使い敵をバッタバッタと倒していくのはまさに痛快の一語につきます。さまざまな邪法、秘法、妖術を用いて日本を影から混乱させようとする朝鮮妖術師たちの技の数々はまさに、山田風太郎の忍法帳や菊地秀行夢枕獏の魔界もののようなノリで、そのわかりやすいドラマ性も楽しいものです。またそんな中で出てくる著者の遊び心の溢れること溢れること。モスラという巨大な蛾が使い魔として現れるかと思いきや、アンドレとオスカルという美貌の女剣士が出て来たり、それだけ聞くと世界観を壊しかねないキャラが出てくるも上手く話の中に折り込んでいて、楽しませるという一点に収斂されていて気持ちいいくらいです。
 でも、そんな荒唐無稽な物語であるからこそ、背景の作りこみがしっかりしていないと嘘くささだけが立ってしまうんですが、この人の本は、韓国史や朝鮮史についてはかなり調べ込んでいって練り込んであって物語の背景がしっかり作られてありますから、そのあたりは綺麗にクリアーされています。著者の造詣の深さが作品に厚みを与えています。
 他の著者作品集を見てみると、この朝鮮妖術師対柳生一族というのは彼の金鉱作品のようで、他にもいくつかあるみたいなので機会があれば徐々に読んでいってみたいと思います。  
 

柳生陰陽剣 (新潮文庫)

柳生陰陽剣 (新潮文庫)

 
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