小説・漫画好きの感想ブログ

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「金春屋ゴメス」 西條奈加著

 「金春屋ゴメス」はSF作品です。
 なんていうと、この表紙と和服でいなせなお兄ぃさんのイラストとの両面攻撃で、頭が???となると思いますが、この「金春屋ゴメス」はSFであることに違い間違いありません。近未来の「独立国家」江戸を舞台にした物語です。ではあるものの、SFであると同時に、ミステリであり、時代劇であります。
 近未来の日本の中に出来た、独立国家「江戸」。すべての科学文明的なテクノロジーを放棄して、石と木と紙で江戸城を造り、士農工商を造り、地理的には無茶苦茶ながら諸外国との唯一の窓口として長崎の出島を造りあげた江戸は、徳川将軍が統治してすでに三代目となったれっきとした国家としてこの世界に存在します。一応は日本とは外交窓口があり、希望者の中から抽選で江戸の民になることはできるものの、入ったら半年は出られず、その江戸から日本に戻ったものは二度と入ることが出来ない「江戸」。そこでは
タイムスリップしたような不思議なファンタジックな、まさに時代劇で見たような江戸があります。その江戸に生まれたものの、小さいときに病気にかかりその治療のために、家族と日本へと出国したまま青年となった辰二郎が本作の主人公です。
 辰二郎は、末期がんの父のたっての頼みと、父親が江戸に住んでいた時の知り合いの強い引きで江戸に入国します。同時期に日本国に入った男女とともに、まずは江戸での身元引き受け人のところへと行きますが、そこに待ち受けていたものこそが本作タイトルの人物、金春屋のゴメス。金春屋にして、ゴメス。そのすさまじい通り名をもつ人物は、名前も凄いものの風体人相体躯からして尋常の「人」の範疇をこえるとんでもない人物なのです。
 故あって、金春屋ゴメスのもとで働くことになった辰二郎は、そこで自分が江戸に呼ばれたのには重大事件の解決のためであったことを知ります。。。
 あらすじ的にはこんな感じの幕開けから始まりますが、いやぁ、面白かったです。一気に読み終わってしまいました。歴史もの、SFもの、ミステリもの、青春もの、すべての要素が渾然一体となって詰まっていますし、なによりもこのゴメスという人物造詣のふてぶてしく力強いこと。これをその名前から読むのを敬遠していたのは勿体なかったです。一風変わった物語を求めるならば、間違いなくこれはその希望をかなえてくれることでしょう。

金春屋ゴメス (新潮文庫)

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追記:下がハードカバーの表紙です。このギャップは何?
金春屋ゴメス

金春屋ゴメス