小説・漫画好きの感想ブログ

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「黒と青」下 イアン・ランキン著

 下巻がなくて読めなかったイアン・ランキンの長編の後半。
 バイブル・ジョンという過去の連続殺人鬼の事件と、現在のジョニー・バイブルという連続殺人鬼の事件、そこに北海油田の作業員の殺人事件の三つの事件をどれも解決しようとする欲張りな刑事、ジョン・リーバスの活躍を描く作品。
 実は上の事件以外にも、リーバスがかつて師ともいうべき刑事とともに逮捕した殺人犯が獄中で自殺した事件について、それは冤罪だったのではないかという内部監察からの圧力とマスコミの執拗な取材攻勢にも悩まされていたりもする。まさに、「苦悩する男」ジョン・リーバスの面目躍如のお話です。
 そして、この巻でリーバスは一つの決心をして、禁酒に挑みます。酔いどれ探偵やアル中刑事というパターンはけっこうたくさん世の中にありますが(ローレンスブロックのマット・スカダーシリーズのように)、リーバスはそこから戻ってきました。ただ、あくまで全編中の四分の一くらいだけの禁酒なので、次巻でどうなっているかは正直謎です。くっついたり離れたりのジル・テンプラー同様に予測がつきません。ただ、こうしてキャラが悩んだり成長したりときに泥沼にはまっていたりとキャラが深く描かれているのはジャンルに関わらず長編の魅力の一つです。
 犯人探しや犯人対決は、現実・実在の迷宮入り事件の犯人をひっぱりだしたためか、曖昧うやむやな状態でちょっと幕切れに切れがありませんが、これはそういう設定だったからやむなしというところでしょうか。
  
 追記:この本は解説が結構頑張ってくれているので、そのあたりも読みどころとなっております。

黒と青〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

黒と青〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


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