小説・漫画好きの感想ブログ

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「大奥」3巻 よしながふみ著

 前巻で、家光(実は姫)とお万(有功)の話は終わりかと思いきや、この巻も引き続き二人のその後でした。1巻が吉宗の代、2巻が過去の記録からの家光の代の話だったので、てっきり別の時代かと思いましたから予想外でしたが、二人の行く末が気になっていたのでちょっと嬉しかったです。
 さて。男女がいれかわった大奥で幸いにもお互いに真実の愛を見つけた二人でしたが、今回はその二人に厳しい現実が襲いかかります。何不自由なく、誰にとがめられることもなく愛を謳歌していた二人に、春日局が非常な措置をとります。それは、家光を懐妊させることができない有功のかわりに、彼そっくりの平民を市井から見つけ出し大奥へ入れ、家光を妊娠させようという策です。妊娠すること、跡継ぎを作ること、血筋を残すこと、それを最大の目標とする春日局にとっては、すでに家光の感情もそれに勝るものではなくなってしまっていたのです。当然のように狂乱してそれを拒否しようとする家光ですが、別れ別れにならぬ為にやむなくそれを受け入れる二人。そして、皮肉なことにすぐに家光は懐妊することになったのです。
 その後もいろいろな事情でさまざまな男をあてがわれることになる家光、その姿を側で見続け表面上は穏やかなれど内心では憤懣やるかたない有功。どちらも、お互いを本気で好きで好きでたまらず、愛しているからこそ、別の誰かに抱かれること、それを黙認することを求められる二人が可哀想でせつなかったです。
 ただ、そうした同情的な心理で読んでいたところに、ばっさりと切り込んでくる家光のこんな台詞があります。
 「今度はその男の子を産めというなら産んでやろう。
 考えてみれば わしが姫として育ったところでそれは同じ事。わしのおば様のお江与の方だとて戦国の世のこととて四人の男に嫁がされ次々と子を産んだ。 
 この世の数多の女がそうやって生きてきた。わしだけが耐えられぬ道理があるまい」と。
 物語として、ひどい事だとか可哀想なことだと現代的な感覚で読んでいたら、それが姫であれば当たり前のことだったんだというこの切り返しにはハッとさせられました。女性が家と家とをつなぐ道具てあり、今と違って16とか17で40とか50、ひどい時には60くらいの領主のもとへ嫁がされる、盟約が破棄されれば別の男のところへ送り込まれる。それが普通の時代も確かに日本にはあったのです。
 恋愛漫画、SF漫画としてだけでなく、こうした考証からはっと見る目を変えてくれるこの漫画、今のところこの三巻までしか出ていない様ですが、次巻も楽しみな作品です。

大奥 第3巻 (ジェッツコミックス)

大奥 第3巻 (ジェッツコミックス)


 
この記事を書きながら大河ドラマの「篤姫」をリアルタイムでテレビで見ているのですが、宮崎あおい演じる篤姫と、堀北真希演じる和宮の女の戦いも、そうした女性の立場からみるとまた違った物語になりますね。今回は和宮の気持ちがとても伝わってきて、よい話でした。