小説・漫画好きの感想ブログ

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「三国志13」 北方謙三著 

 北方三国志の最終巻です。
 登場人物のほぼすべてが熱い志をもっているといっても過言ではない、極めつきに漢がかっこいい三国志です。
 シンさんが一気読みしたのを契機にもう一度読み返してみましたが、やはり熱かったです。物語的には既に劉備張飛関羽も超雲も逝き、曹操すら亡くなった後ということで、孔明対仲達の戦いが続いているだけの、昔のようなぶつかり合いや乾坤一擲の大決戦はない時代なんですが、それでもやはりこう身体の芯が熱くなってくるような物語でした。
 「兵の数か、兵糧か、有能な武将か、運か、そのいずれかがあれば孔明は魏を滅ぼしていたかも知れない」そういわれるほどの鬼神の働きぶりを示した孔明は、それ故にか命を使い尽くして病で倒れます。あくまで私利なく、主君劉備のため、志のために最後まであらん限りの才能と命を使い尽くして散っていく孔明の運命は、そのまま蜀の国の運命となり魏にあっけなく併呑されてしまいます。そのあっけないこと、あわれなことは、劉備たち三兄弟と孔明の戦いをみていただけに余計に切なくなるわけですが、、、まぁ日本人男子なら誰もが知っているお話かも知れないですが、そういう背景があるだけに、孔明の最後にはやはりじんとしてしまいます。
 忠臣蔵とか新撰組とかと同じで、知っていてもやはりぐっとくるのがこの三国志という物語なのでしょうね。
 強いて難点を挙げるならば、ラストがすごく静かすぎて消化不良な感じがしないでもないところくらいでしょうか。ただ、ラストのことに関しては、吉川三国志や「蒼天航路」でも、孔明がいなくなった後は描かれていないので、物語が尻すぼみにならないようにするのには仕方がない措置なのかも知れません。今現在進行中の宮城谷昌光の「三国志」がそうしたら、もうそれが一つの様式美というか定型になってしまうかもしれませんね。

三国志〈13の巻〉極北の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志〈13の巻〉極北の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)