小説・漫画好きの感想ブログ

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「夜香抄」 菊地秀行著

 菊地秀行の「魔界都市新宿」を舞台にしたマンサーチャーシリーズからスピンオフした吸血鬼の王「夜香」を主人公にした物語。秋せつらや、ドクター・メフィストなどは出て来ません。純粋に吸血鬼たちの物語です。
 ということで先日出た吸血退治のヴァンパイアハンターDの新作「不死者島」の内容がちょっと首を傾げる内容だっただけに、何かしら感じるものがあるのかと読んでみました。が、正直わかりません。方向性が当然といえば当然のことながら全然違うのもさることながら、こちらもこちらでちょっと分からない展開と仕上がりだったので余計にわからなくなってきました。
 あらすじは、フランスの巨大軍需メーカーが兵器としての吸血鬼を作り上げたものの、太陽の下で歩けること以外は全て本物の吸血鬼と同じところまではできたものの、不老という部分がどうしても達成できなくてその実現の為に、新宿の戸山住宅に住む本物の吸血鬼たちの一族にとある交渉をして戦うというお話。一人の女性に対して、攻めと守りに別れて、フランス製の吸血鬼チームはターゲットの血をもう一度吸えば勝利。夜香率いる魔界都市チームは、彼女を守りきれば勝ち。フランスチームが勝てば、不老の研究のために戸山住宅から何人かの被験体として吸血鬼を提供するという話になり、夜香は夜王としての誇りから、フランスチーム6名に対して自分一人で相手をすると宣言して戦います。
 あとは山田風太郎とかの忍法帳シリーズよろしく吸血鬼としての秘術と武器コンツェルンらしく最新鋭の武器を駆使しての戦いになりますが、このあたりは菊地秀行のいつものパターンで特に目新しいところはなし。逆にいえばそこがマンネリになっています。そこに緊迫感が多少たりとも足りなくなるのは、敵味方とも吸血鬼なのでしぶとく死なないせいでしょうか。焼こうが切り裂こうが撃ちまくろうが古式からの方法でなければ本当の死に至らない同士ですからどうしても戦いに決め手が薄く、夜香の方が年の功といってはあれですが(見た目は漆黒の美青年ですが)力があることと、とにかく美しいということで敵味方の女性軍を結果的にほぼ全員美しさの魅力のみで籠絡してしまうのが、駆け引きという要素や意外性がなく、バトルものとしてみるとバランスが崩れてしまったように感じました。
 あとは、作中に某中国生まれの一大王国を築いたという吸血鬼が出てくるのですが、、「夜叉姫伝」の時代とかぶると設定上まずいんじゃないのかなぁ、、とゴニョゴニョっと気になっちゃったりして。まぁ誰もあまり気にしない話だとは思いますが。

夜香抄 (ノン・ノベル)

夜香抄 (ノン・ノベル)