「陋巷に在り」1 酒見賢一著
先日もちらりと話していた読み返しだした小説の一つです。
新作も積ん読が結構たまっているんだけれど、面白い小説ってのは力があって一度手にとるとずるずると読んでしまいます。この本もそんな一冊で、孔子の弟子の顔回という弟子を主人公にもってきた孔子ものなんですが、テーマがさまざまで寄り道・逸話・考察・現在思想との違いなどが小説の中であるにもかかわらず著者の変幻自在の語りの中で繰り返されていて面白いです。その語り口は、三人称であるけれども、さきのようなテーマについて地の文でいきなり著者が現代において、、と語りを入れたり、こういう説もあればそういう説もある、みたいな事を平気でやっていきます。時代小説にはときどきこういうスタイルもありますが、この作品に関してはそれが突出しているし、その語りがまるまる百ページ近く続くこともあり、普通の小説作法とはかなり違っています。
それがしかもめっぽう面白い。
顔氏という氏の話から始まって、当時の巫祝とは何であったかとか、孔子は一体何を目指していたのか、孔子の実像はどういったものであったのかの概要が、この巻では描かれていますが、次の巻からはさらに面白い話が展開します。
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/03/28
- メディア: 文庫
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