小説・漫画好きの感想ブログ

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「猫丸先輩の空論」 倉知淳著

 日常の謎系列のミステリ短篇連作集、猫丸先輩シリーズの文庫最新刊です。
 しかし、このシリーズタイトルもミステリなのに、「推論」に続いて「空論」ときましたか。
 でも、こういうタイトルだからふざけているように見えて、推理はけっこう本格なんですよ。しかもちょうどいい塩梅で読者も「あ!」と驚かされるのが半分弱、読者が「わかった!」って思うのが半分強のちょうどいい塩梅なんです。
 それでいて、この猫丸先輩という、小柄でまんまる目の猫のような30すぎのどこか憎めないキャラクターがすごく強くキャラ立ちしているので、キャラ萌えとして小説を読む向きにも十分に魅力的です。大人なのに子供のようで、好奇心だけで動いている不思議な男。しかも語り口はちょっと落語口調で面白い。
 いいシリーズです。今回もたっぷりと楽しませていただきました。先入観で騙されてしまうちょっとラブコメ風の「子猫を救え!」というのが一番のお気に入りとなった作品集でした。
 ちなみに、猫丸先輩シリーズは他に「猫丸先輩の推論」「日曜の夜は出たくない」「過ぎゆく風はみどり色」「幻獣遁走曲」などがあります。「日曜の夜は出たくない」だけがちょっと暗めです。

猫丸先輩の空論 (講談社文庫)

猫丸先輩の空論 (講談社文庫)