小説・漫画好きの感想ブログ

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「エンバーミング」1巻 和月伸宏著 

 「るろうに剣心」「武装錬金」の和月さんの最新連載作品の1巻目です。
 「エンバーミング」というタイトルから死化粧とかそういう系統の話かと思いきや、フランケンシュタインのお話でした。フランケンシュタイン=人造人間というくくりで、19世紀のイギリスを舞台に人造人間を作る各地の科学者や人造人間同士の戦いを描いた作品(になっていくような気配)。
 物語導入のこの1巻での主人公は、ヒューリーとルイスという二人。彼らとエーデルという少女は5年前に、乗り合い馬車が雪で立ち往生をしているところを謎の体中がツギハギだらけの男に襲われ、家族を全員殺されてしまいます。近くに住む貴族に命からがら助けられた彼らはなんとか一命を取りとめた後、かたや逞しい若者となり、かたや養女となってお嬢様になるわけですが、それらはすべて悲しい運命の序章にすぎませんでした。彼らは過酷な経緯のすえ、それぞれが人間としては死亡し人造人間として復活。戦いに身を投じることになります。
 ヒューリーは、激しい怒りと復讐のために全ての人造人間を殺害することを誓い、ルイスは、歪んだ愛情と知識欲のままに人造人間としての究極を極めようとして人間の心を捨てます。今でいうヤンデレのキャラになってしまいます。その結果は、著者も書いていますが、大量に人死にがでる物語が出来上がりました。前作でも結構死んでいましたが、今作はより人が死ぬ暗い物語になりそうですが、たまにはこういうのも悪くないでしょう。題材が題材ですし、主人公が死者である以上、能天気に明るい設定というのも無理があるでしょうか。
 ところで。
 「るろうに剣心」「武装錬金」と本作の流れを見ていると、和月先生は、人造人間、からくり人間、人の形をしているが人間にはあらざるものというモチーフに取り憑かれているようですね。個々の物語の中では当然のこと、キャラクター造詣やデザインなど新機軸を打ち出そうと色々模索されていますが、この基本モチーフだけは一貫して変わらないところをみると、このモチーフはもう和月先生にとっては何か絶対的なものなんだろうなぁと感じました。それだけに、和月先生の作品では、主人公の悩みもある意味共通していて、今作でも、主人公が、自分が憎むもの嫌悪するもの(フランケンシュタイン)と同じ存在になったことにどう悩み、葛藤し、どう折り合いをつけてこのあとの物語に進んでいくのがすごく興味深いです。
 剣心は「殺し屋」たちと同じ存在であった人斬りの自分を否定して「不殺」の誓いをたてて自分を変えました。カズキは錬金術の核金の力のせいで、自分たちの敵であるホムンクルスと同じ存在になりますが、それを打ち破るためにそれを受け入れて戦いました。さて。本作の主人公ヒューリー・ラットライナーはどうなっていくのか、どういう結論を自分の中で出すのか。そのあたりの読みどころが楽しみです。
 また人造人間ということで、身体をいくら壊されようが致命傷の弱点以外のケガであればなんとでも修理がきき、強化も合体も変形も思いのままにできるであろう設定をどういう風にいかして話を作っていくかが楽しみです。

エンバーミング-THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN- 1 (ジャンプコミックス)

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