小説・漫画好きの感想ブログ

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「居眠り磐音江戸双紙27 柘榴の蠅」 佐伯英泰著 

 居眠り磐音シリーズの最新刊です。
 蛇足ながら、NHKドラマで山本耕司さんが主演されている「陽炎の辻」の原作です。
 さて。
 今作のあらすじは、再び次期公方様の徳川家基がおしのびで江戸の城下に出たいというのを磐音たちが助力し実現する話を軸に、佐々木道場の成長株のでぶ軍鶏こと利次郎の成長、旧友の竹村武佐衛門の行く末などを描いています。全体的には全巻が冒険活劇だったのに対して、今回は緩やかな大河ドラマの群像劇という面が強くなっていました。
 自分が興味を惹かれたのは、竹村武佐衛門の行く末。三羽がらすのようにしていた品川柳次郎が着実に自分の家の基盤を固めているのに対して、子だくさんで大酒飲みで家計が苦しいのにケガをしてしまって力仕事ができなくなった武佐衛門。彼が武士を捨てるかどうかという局面にまでたたされた(今回結論は暗示でしかでませんでしたが)状況をどうしていくのか。
 個人的には、いくら内職や力仕事をしていても武士は武士で、武士を捨てるということはあまり現実的でないかと思っていましたが、当時では武士の株ごと捨てたり富裕な町民と縁組みすることで形式的には武士のままだが実は士分を捨ててしまう侍もいたようですし、このあたりを著者がどういう風に物語していくのか興味深いです。

石榴ノ蠅 ─ 居眠り磐音江戸双紙 27 (双葉文庫)

石榴ノ蠅 ─ 居眠り磐音江戸双紙 27 (双葉文庫)