「容疑者xの献身」 東野圭吾著
東野圭吾作品で映画ももう公開している作品ですね。
去年?、今年?、福山雅治と柴咲コウ、北村一輝でドラマ化されていた作品の映画原作です。今回の映画では堤真一さんも出るとのことで読みながら完全に脳内変換してしまいました。読んでみると、あきらかにキャストに違和感がありましたが、でも、かなり満足感をもって読ませていただきました。及第点は余裕で越えていました。読まずにいようかなと思っていたんですが、思い返してよかったです。
さて。
この「容疑者xの献身」ですが、叙述トリックがあるのでトリックについてはネタバレができない話なんですけれど、そのあたりについて触れないと伝わらない部分があるのでそこは後で折り畳みを入れてできたら入れてみます。で、それ以外のとこで言えば、天才湯川VS帝都大時代の同級生だった石神という天才数学者というのが本作の売りだと思うのですが、この部分に関しては本当に面白いです。天才は天才を知るというか、切れ者同士の策のぶつけ合いと読み合いの応酬は読んでいて読み応えがあります。そして、その対比の中で、湯川の普段はクールな態度と思考の中にある熱い部分が浮き彫りになっていて、楽しめました。
あらすじは、こんな感じ。石神の住むアパートの隣室に住む母子家庭の親子にまとわりつく別れた亭主。よりを戻そうとやってきた彼を、はずみで殺してしまう親子。母親に惚れていた石神は、薄い壁越しに聞こえてきたただならぬ物音から状況を察して、おろおろとするす親子に対して自分が二人を助けると宣言してします。自主しなくてもいいように自分が守ると。彼の言う通りにすることで、疑われつつも逮捕されない二人。彼女らを守る石神と、彼に疑いを抱いてしまった湯川。二人の対決の結末は最後の最後に意外な真実を見せます。
ということでここから畳みます
さて。
ここからはネタバレありなんで書いちゃいますけれど、最後の最後の事実は衝撃的だったし、やられた〜と思いました。これってまさに本作のネタそのままなんですよね。代数の問題に見せかけて微分積分の問題のような、まったく違うものだと誤認させるトリックの方法。別の死体を用意して、警察をミスリードする方法。これと同じ事を小説の中で東野さんに僕たちはやられちゃい、見事にはめられてしまいました。まず、そのことに脱帽でした。
二人の天才の対決、攻める湯川に守る石川。犯人もトリックも殺人については全てを最初に出してしまってあとは二人の対決もののように見せておいて、実は叙述トリックというこの構成。これ自体が作品のメタ構造になっていて、本当に脱帽でした。ただ、その為に地の文で犯行日時について触れないなどちょっとアンフェアなところもあるんですけれど、十分これは許される範囲でしょう、なによりこのアイデアでやりきったところだけで評価大です。
もちろん、その為に石神はかなりやりすぎた性格になっちゃったし、いかれた人になっちゃってしまっている部分はあるんですけれども、それでもその純粋さは(異常ではあるけれど)ふらふらと工藤によっていっちゃう彼女よりも貴く見えます。
これ、女性の人が読むとまた感想違うのかも知れないけれど、男性側から読むと、あのお母さんの心理が分からないんですよ。確かに石神は、理想的な恋人候補でもないし外見も好みではないんです。でも、自分が刑務所に入らなきゃいけないとこを助けてもらって、娘の将来が潰れるところを助けてもらって(そのこと自体の是非は別として)、その後も彼女を守るために毎日必死で頑張っている彼を横目に、ふらふらとデートの誘いにのっていっちゃったり(それも何度も)する彼女がわからないですねぇ。いや、わからないではないですけれど、そこはやっぱり遠慮というか、意気に感じる部分があっていいと思うんですけれど、それはそれ、これはこれなんですかね。
まぁ、それこそ勝手に想われいるんだから、知った事じゃないといえばそれまでなんだけれど、無関係の自分のために犯罪(彼女が認識している部分だけでも、死体遺棄、死体損壊、公務執行妨害、偽証罪などいくつかの犯罪がある)を犯してくれているわけで、しかもそれは合意の上でなら、それこそモラルというか人間としてそれはある程度受け入れてあげないと可哀想すぎると思ってしまいました。
最後に娘が良心に耐えかねてか自殺未遂するというところで、彼女も少しまともに戻りましたがあれがそのまま最後までいってしまうなら、石神があまりにも哀れで。←あくまで一感想ですが。
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/08/05
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