「ふたつのスピカ」1 柳沼行著
たまたま偶然に読んだ本なんですが、これが実に良かったです。
ちょっとだけ未来の日本。日本初の有人宇宙ロケット獅子号の打ち上げが失敗し、ロケットが市街地に墜落、パイロットはもちろん民間人もたくさん死んだ世界。それから十年後、そのロケット技師だった父と、その時の事故で死んだ母をもつ一人の少女が、宇宙飛行士養成学校に入学して宇宙を目指す青春物語、になっていくんだと思うお話。
(まだ1巻しか読んでなくて、1巻では、現在入学試験中なんで、ひょっとしたら入れないなんていうパターンが万万が一にもあるかも知れないけれど、たぶんまぁ、次の巻あたりで入ることと思います)
あすみ、という少女が主人公。ものすごく小さくて、自己主張がちょっとだけ弱く、ライオンのかぶりものをした幽霊を見ることができる女の子で、なんだかものすごくけなげな主人公です。1巻では、このあすみの過去と、謎の幽霊ライオンの正体などが語られますが、最初のほうからSF漫画のはずなのに、なぜか感動や涙を要求するような雰囲気がひしひしと伝わってきます。丹念に、過去や想いを描いていくからか、まだまだ物語の序盤なのにしっかりとあすみを応援する気になってしまいます。
また宇宙に行くんだというシンプルな物語設定が、妙に心ひかれます。宇宙に行くための話となると今モーニングで連載中の「宇宙兄弟」とか、「王立宇宙軍 オネアミスの翼」なんかが思い浮かびますが、ああいうのにも似たどこか妙にセンチメンタリズムを呼び起こす物がこのテーマにはあるようで、ついつい夢中になって読んでしまいました。
絵柄は、すごくほのぼのとしていて、ちょっと前の少女漫画的、SFの作品には本来向いていなさそうな感じですが(まぁ川原泉の「ブレーメン」や「宇宙の食欲魔人」などがあるから向いてないとは必ずしも言えないですが)、この作品に限ってはきちんとはまっています。
どうやら、NHKで昔アニメ化されたりもしているようですが、気にせず漫画版で読んでいきたいなと思う作品でした。偶然とはいえ、いいのを見っけました。
- 作者: 柳沼行
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2002/01
- メディア: コミック
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