小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「きみとぼくの壊れた世界」 西尾維新著

 本年277冊目の紹介本です。
 「戯言シリーズ」でデビューした西尾維新の「世界」シリーズの第一作です。西尾維新さん、僕はたぶん三周くらい周回遅れで読んでいるんですが「刀語」シリーズだとか「物語」シリーズと順調に作品を発表し続けているようで、化物語という作品は近日アニメにもなるようです。

 さて。「きみとぼくの壊れた世界」。
 本作では、強烈なラブコン&シスコン兄妹が登場します。
 妹のためなら何だってする櫃内様刻と、兄と誰かが仲良くすることに我慢ができない櫃内夜月。
 どちらも容姿端麗・頭脳明晰で、二人は同じ学校の高校三年生と二年生です。私立の難関高校に通っている二人は、表面上はごく普通の生活をしています。が、二人の関係はもうあと一歩で禁断の近親相姦にたどりつくところまで来ています。そんな折も折、妹の夜月に、兄には仲良くしてる女性がいると言って近づいてきた男がいます。数沢六人という名前のその男のことを、保健室の主といってよい保健室登校をし続ける少女の美容院坂黒猫に聞いた様刻は、妹の教室に行くなりその数沢六人を叩き伏せてしまいます。
 そのあたりから二人の関係、そしてひそかに様刻に思いを寄せていた琴原りりす、そして剣道部の主将で友達の迎槻箱彦とのそれぞれの関係もだんだんにおかしくなっていきます。今まで様刻が気にしていなかった、もしくは妹との関係より大切なものはないと意識していなかった世界が徐々に壊れていきます。数沢六人が学園内で殺されてしまったのです。。。
 ということで、結局は殺人ミステリでありつつも青春小説という不思議なポジショニングを取る本作は「戯言」シリーズ同様に、完璧に壊れてしまっている不思議な名前の登場人物、特徴的なキャラ設定があり、そしてこれも「戯言シリーズ」同様に強い語りの力で一気に読ませます。相変わらず個性的というのもばかばかしいくらいに変わったキャラが次々と登場しますが、それが結構読ませます。特に、今作では、最初は脇役かと思わせて実はもう一人の主役だった「病院坂黒猫」という女の子が登場するのですが、この子が非常に面白いです。しゃべり方といい、雰囲気といい、、、途中で明かされるもう一つの素顔には啞然とさせられましたが、こういう特殊なキャラが活かせる世界そのものを作り上げた著者の勝ちでしょう。
 そうそう、ミステリの謎やトリックそのものはまぁ割合とわかりやすいので、ミステリとしての評価はそうでもないですが、途中での新本格やパズラーなどについての論議などはメタとして読んでもなかなか面白かったです。
 

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)