「おひっこし」 沙村広明

アニメ放映間近の「無限の住人」の作者、沙村氏の青春コメディ。おそらくは東京郊外にあるらしき大学を舞台にした、バンドをやってる男女の恋愛コメディなんですけども、全体的にとにかく濃い漫画です。
もとが時代劇漫画家だけあって書き込みが半端ないし、けっこうデザインとかに凝るタイプの漫画家さんだから、画面がものすごく黒く服とかも線が多いです。また出てくる人間出てくる人間が全員感情が激しいので、事実関係だけみると意外なまでに純情なのに、画面上からの印象はまったく逆。いい意味でドロドロとした感じで、若さ故の妄想と煩悶と熱さがブレンドで複合放射されていて、ひたすら熱気にあふれています。自分の若いときを考えてひきくらべたら、自分なんかはとうていここまで熱くなかったし濃くなかったです。そして、そうでなかったことが少し残念に思えるくらいにその熱さが羨ましい感じでした。もうちょっと、こういう熱があってよかったかなと。
この世界の感覚は、あくまで雰囲気だけで例えていえば、漫画の世界からはちょっと離れちゃいますが、大槻ケンヂの歌の世界のような感じですかね。
同時収録に、とある少女漫画家の波乱に満ちすぎた障害を描いたギャグ作品と、京都での観光体験レポートが収録されています。

竹易てあし漫画全集 おひっこし (アフタヌーンKC)