小説・漫画好きの感想ブログ

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「キマイラ1 幻獣少年・朧変」 夢枕獏著

 本年271冊目の紹介本です。
 キマイラ。 
 キメラと同じでもともとの語源は、複合した生命体。一般的には蛇とライオンや、豹と猿などいくつかの動物が複合されたような状態のものを言う。最近では合成された生物なんかでも、このキメラ=合成生物として扱われることが多い。
 と、まぁタイトルの話は置いといて、「幻獣少年キマイラ」三度目の新装丁、サイズ変更で登場です。最初は今はなき朝日ソノラマのジュヴィナルで出ましたが、その後に2000年にハードカバーに変更、今回はそれがノベルズ版に変更です。そして、表紙デザインもいままで一貫して担当していた天野喜孝さんからがらりと変更です。
 中身の方は、今をときめく、というよりはすでに大御所のようなポジションになってしまった夢枕獏さんの全てのエッセンスがつまった伝奇もので、文句なく面白いです。高校生くらいの時に読んだ時とはやっぱりそれは読後感が違うんですけれど、それはそれで全然違う意味でやっぱり才能を感じさせるし何より熱く魅惑的な小説でした。格闘技、妖異、変身、ロマンス、友情、山、冒険すべての夢枕獏的要素が色濃く出ています。
 闇に美しい遠吠えを喉もはりさけよとばかりに叫ぶ主人公。
 身体が徐々に奇妙に変形し、人でありながら人でありながら違う生き物に変身、戦う主人公。
 それらが文句なく美しくカッコいいのです。
 勿論、20年以上前の作品ですので、読んでいて古いと感じる部分もあります。携帯が出てこないとかそういうことではなく、動きや雰囲気が時代がかっていて、昔の映画のような雰囲気のところも多々あります。けれど、たぶん読んでいただくと、「あれ、これどこかで読んだことないかな」「あれ、これ、あれに設定似ているかな」「これ、なんか展開があれに似ているな」というような既視感を各所で覚えると思います。それもそのはず、この作品こそが今の伝奇ブームの魁、火付け役的な作品で、菊地秀行の初期作品と同様にすべてのルーツといってもいいかも知れない作だという事を再認識できると思います。
 まだ完結していない作品だし、スケールはどんどん大きくなっていっている本作。
 面白いです。

キマイラ 1 幻獣少年・朧変 (ソノラマノベルス)

キマイラ 1 幻獣少年・朧変 (ソノラマノベルス)