小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「スティール・ボール・ラン」16  荒木飛呂彦著

 ジョジョの奇妙な冒険、最新刊です。
 今作、主人公のジョジョとツェペリは活躍しません。というよりは、欄外おまけでツェペリがある芸人さんの物真似をする以外(これはこれで衝撃的ですが)は殆ど出て来ません。
 今回はとにもかくにも「アメリカ大統領」これに尽きます。 
 スティール夫婦の秘密等も描かれましたが、それをふっとばす程のインパクトのあるアメリカ大統領の激しさでした。歴史上、ここまで無茶苦茶な設定とデザイン・行動様式、動機を与えられたアメリカ大統領はいたでしょうか。いや。決していないでしょう。キリスト教圏に限らず、キリストや聖骸布・聖杯・ロンギヌスの槍を主題や小道具に使った小説や漫画は数あれどここまでそれをメインに、しかもキリストのあり方自体を自分の小説のネタに強引に引き寄せた作家はいないでしょうし、その中でここまで無茶なキャラクターをふられたアメリカ大統領はいないでしょう。
 自分の欲望のためになら何だってやる、程度の話ではなく、論理的に物事を考えながらも狂っている、しかもそれが世界で一番の現世の権力を手にいれているというのですから、この世界の狂気の行き着く先が普通である筈もなく、今回でその壊れっぷりというか壊れ方そのものも異常であることが垣間見えました。大統領夫人になりすましたルーシーを襲う大統領はまさに壊れています。
 サブタイトルの「いともたやすく行われるえげつない行為」にふさわしく、この巻の中ではかなりえげつない事を各キャラクターが何人かがやりますが、大統領のそれもかなり大概に凄かったです。
 さて、話戻して、この巻ではキャラ設定もそうですが、展開も混沌の嵐です。先の見えない、ひさしぶりに荒木さんらしい常識をはるかに超える展開でした。特に、キリストが煙突の中で仕掛けた例の事柄は一体どういう結末のためのネタフリなのでしょうか。
 俄然、先が楽しみになってきました。

STEEL BALL RUN vol.16―ジョジョの奇妙な冒険Part7 (16) (ジャンプコミックス)

STEEL BALL RUN vol.16―ジョジョの奇妙な冒険Part7 (16) (ジャンプコミックス)