小説・漫画好きの感想ブログ

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「虚空の旅人」 上橋菜穂子著

 「精霊の守り人」シリーズの文庫最新刊です。
 「精霊の守り人」の主役だった新ヨゴ国の皇太子のチャグムが再び主人公となります。前三作のファンの方なら、「おぉ、、チャグムが立派に成長している」とちょっと感動してしまうと思います。 
 さて。物語の舞台は、ヨゴ王国周辺を離れて、南の大洋に面した新しい国が登場します。そして、その新登場の国の新しい王の即位式にあわせて、諸外国の人々も登場、そしてまた南の海洋の果ての大陸を統一した帝国までもが暗躍という形で登場します。言い換えれば、今まではチャグム、バルサ、トロガイ、タンダたちの生まれ故郷やその周囲だけだった物語が、一気に広がりをもって厚みをもちました。おそろらくは、彼らの運命が,最初の半島だけにおさまるものでなくなり、また、旅人や守り人の物語が他の各地でも起きるのでしょう。
 そういう意味ではこの巻を楽しむだけでなく、先に繋がる大きな楽しみを約束してくれた巻でもあります。で、話戻して、今回のお話では、チャグムがその即位式に新ヨゴ皇国の帝の名代としてやってきたところ、王位継承の儀式の裏で、巨大な侵略の魔の手が王国に伸びていました。第二王子に呪いをかけて第一王子を殺させようとしたり、配下の島々の長を寝返るように秘密交渉をしたりと、ただ単に力押しの武力で攻めてくるよりも厄介な搦め手で攻めてきます。話の行きがかり上でその陰謀に立ち向かう事になったチャグムが、部下の星読のシュガに語る彼なりの帝としての心構えがすごくよかったです。
 帝として国をおさめる為政者である以上、人を見殺しにしなくてはいけないこともある。だが、自分には、そういう時でも黙ってやらずに必ずそれを事前に教えて欲しい。そういう覚悟の為政者になろうとしているところに、理想だけでなく現実をも見ようとしているチャグムの成長がしっかりと見えました。こういう少年が経験と智慧をつけて為政者となっていく国はきっと立派な国になるのでしょうね。 
 あぁ、日本とはえらい違いだ。と全然関係ないこともちょっと思ってしまうような本読みでした。
 しかし、、、これで文庫は全部読了。あとまだハードカバーが6巻もあるんですよねぇ。文庫落ちまで我慢できるかなぁとそれが心配。

虚空の旅人 (新潮文庫)

虚空の旅人 (新潮文庫)