小説・漫画好きの感想ブログ

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「鏡の国の戦士」グイン・サーガ外伝21巻 栗本薫著

 「グイン・サーガ」の外伝の最新刊。
 「グイン・サーガ」の未来の物語を描いた外伝の第一巻「七人の魔導師」よりも、さらにあとの時代を描いた作品です。つまり、現時点では「グイン・サーガ」の全作品の中で、一番未来を描いた作品ということです(「カローンの蜘蛛」などのゼフィール王子を描いたパロが滅んだあとの更に別シリーズのような超未来は別として)。  
 本編正伝のほうの最新刊である「豹頭王の苦悩」で触れられたグインとシルヴィアの決定的な別離・シルヴィアの産んだ赤子の処理などと、「七人の魔導師」で描かれていた未来との整合性を確かめようと読んでみましたが、余計に混乱してきました。
 ハゾスの軽率な行動(と敢えて書きます)によって、決定的な局面を迎えてしまったグインとシルヴィア。その顛末はよほど悲劇的なことになるはずだが、この外伝を読む限りはグインはあっさりとその過去を断ち切り、愛妾を得、子どもまで儲けていますし、ハゾスを含めまわりの人間、シルヴィアの実の父親でさえそれを喜んでいるようです。となると、シルヴィアは完全にケイロニア宮廷の中では無視もしくは表面上だけの儀礼の扱いを受けるという今以上につらい立場に置かれていることが予測されます。
 しかし、本当にそれはありうべき姿なのでしょうか。と、疑問符がつきます。もちろん、権力者の世界でのことだし、現在とは違う倫理観、価値観がある時代であり世界のことです。何もこのケイロニアのみにまったく完全なる正義や平和を、それも物語の中心国であるわけですから、そんなものを求めることは馬鹿げているとは思います。しかし、グインの国に対してはどこかでそれを求めているのでしょう。どうにも、この「鏡の国の戦士」を読むと、そのあたりでここにはまったく出てこないシルヴィアのことが想起されずにはいられませんし、なんだかグインに裏切られたような心持ちになります。
 どうにも、グインには性欲というものがないようなイメージがあるからかも知れませんが、愛妾との関係については居心地が悪いです。