小説・漫画好きの感想ブログ

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「もっけ」8巻 熊倉隆敏著

 霊媒体質で、見えてしまう姉妹の物語である、「もっけ」。
 この物語の特徴はなんといっても、今は高校生と中学生になったこの姉妹が、別に陰陽師でもなければ拝み屋でも払い屋でも退魔師でもなく、ごくごく普通の少女たちであるという事であろう。霊感が強く、そちらの世界を見る事や、ある程度意志の疎通が出来る主人公が出てくると、どうしても物語はその方向に偏りそうなものであるが、この物語はそちらへと針が振れない。あくまでも、そういう存在はそういう存在としてそこにあるものであり、むしろ余計なちょっかいは逆効果を生むと再三物語の中で強調される。
 そういう中で、二人はそれぞれが少しずつそういう普通の人には見えない世界をあるがままに受け入れ、或いは妥協し、日常生活を営んでいく物語である。時には、見えるけれども何も変えられないことに対してストレスをため、見えるが上に変えることで自分が不利益を被ることでジレンマを感じ、また或は見えてしまうことでそういう存在からいらぬちょっかいをかけられて日常生活に支障を来たし、、、と正直彼女達にとっては、見えること、感じられることで何かメリットがあるのかといえば現時点では何もない。その体質故に都会で暮らしづらく、実の母親とも住めず田舎の祖父のところに預けられることになったままである。
 なので、物語は中高生の姉妹ものであるにも関わらず、根本的に暗いというか、ある意味辛気くさい物語になっている。正直書いていて思ったけれど、なんで自分が購入し続けるんだろうと思うほどに、物語的なカタルシスは得られない。ときどき、ちょっといい話的な話もあるにはあるが、基本的には遠野物語などと同じで、ただただそこにあるものについての話で、因果応報譚というような綺麗な結末がつかないものの方が多い。そういう物語の随所で二人がしょっちゅう悩む。自分の体質や、霊によるさしさわり、対人関係や、家族の葛藤でかなり悩んだり凹んだりする。暗いときは本当に暗い話が続く。
 なので、本当にレビューを書きながら改めて不思議に思うが、どこに魅力があるのだろうかというような設定ではある。
 しかし、逆にいえば、そのあたりが変な意味で読者受けを狙ったり安易なストーリー展開をしないところに一定のファン層がついているとも言える。自分もひょっとしたらそういう一人かもしれない。奇妙な味わいはあるがカタルシスはない。それでも、このレビューを読んでそれでも興味をもった人はまず1巻だけ手にとってみて欲しい。

もっけ(8) (アフタヌーンKC (521))

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