小説・漫画好きの感想ブログ

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「カクレカラクリ」 森博嗣

 単発読み切りの森作品です。
 ずいぶんとノベルズに落ちてくるのが遅かったようで、すでにドラマ化までされているようですが、まったくノーマークの一冊でした。評判がそれほどよくなかったのでどうしようかと思いましたが、ギリシア文字シリーズよりはいいですよという評も聞き読んでみました。
 ストーリーは一夏の経験もので、廃屋マニアの大学生二人が雑誌で紹介されたとある山奥の廃工場を見に行くことに決め、その村出身の同級生の女の子と一緒に夏休みを利用して出発。めでたく廃工場にたどり着いたが、二人はそれよりも興味深いものをその村で聞く。それは、その村に伝わる「カクレカラクリ」の言い伝えで、その言い伝えによれば村の天才絡繰り師が120年前に作ったカラクリが村のどこかにあり、それが120年後の今年、どこかで動きだすという話。お宝も隠れているだろうという話に興味が湧いた二人は、同級生とその娘、そして彼女たち姉妹の家と村を二分して対立するという家の息子とも協力してカラクリ探しを開始するが、、、はたしてカラクリは本当に存在するのか、その宝とは。。。といったようなお話。
 なので、謎解きが一応は物語の中心にあります。が、森作品の最近の傾向からしても単純すぎるくらいに簡単な謎と仕掛けなので、その宝探しについては読者はすぐに暗号解読してしまえると思います。いたって簡単すぎるくらい簡単なんです。なので、そのぶん登場人物たちに意識はいきますし、そうすると他の森作品と違って、語らないことをよしとする、よくできた人間たちが非常に多い事に気がつきます。
 ネタばれになってしまうので細かくかけませんが、よくわきまえている、全体の事をよく考えている人物が多くて、実に悪者が出てきません。のどかな田舎町はただ田舎であるが故にのどかなのではなくて、そうなるように考えている人たちがいてというような形です。主人公たちもいたって温和(ただし森作品によくある変な妄想をよくする男子は登場)だし、ほのぼのしていて、実はこれ、中高生向きくらいの作品ではないかと思うくらいなのでした。
 ただ読後感はそんなに悪くないです。
 欲をいえば、もうちょっと謎解きに凝っててくれたり、ストーリーを膨らませてくれたらなぁという気がしないではなかったですが、青春小説として読めば悪くはない出来でした。

カクレカラクリ (講談社ノベルス)

カクレカラクリ (講談社ノベルス)