「ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄弟」 西尾維新著
読み飛ばしていた一冊で、これで先に読んでしまった「ネコソギラジカル」三巻セットとあわせて西尾維新デビュー作の「戯れ言遣い」シリーズはすべて読みました。
今更の西尾維新デビューでしたが、大変楽しく読ませていただきました。登場人物のほぼ全員が異能・異形・天才・特殊能力者ばかりで、人の死についても普通じゃない感覚の持ち主ばかりが登場するシリーズで、ミステリとしての謎解きもあるものの、それは本当に要素の一つでこれだけ人死にが出る話なのに、青春エンタメと銘打たれるのがよくわかる青春ものでした。ありえないキャラ造形のオンパレードでしたが、それが不思議に漫画っぽくてポップで、それでいてそれぞれが語りも結構やるというこのシリーズは西尾維新の絶妙のさじ加減と、語りの力で破綻無く最後までいきついてくれたシリーズで、よいシリーズでした。
さて。
本作のあらすじは、前作「サイコロジカル」で岐阜三中のマッドサイエンティストな博士の研究所から無事生還してから一ヶ月後。主人公の「いーちゃん」のところに、前作からの流れでそのままいついてしまった生物学者が奇妙な風体の女の子を拾ってくるところから幕はあきます。上半身を腕をきっちりと固定する拘束衣に身をまとい、そのうえに黒いマントを羽織、財布には名探偵という名刺をもった少女。匂宮理澄。彼女こそは、実は殺人奇術団匂宮兄弟の殺し屋だったのです。彼女といーちゃんの出会いはそもそもは偶然だったはずですが、その偶然を偶然としない「狐面」の男の登場が物語をあらぬ方向から捩じ曲げ、再びいーちゃんは殺人現場に放り込まれてしまいます。
望んでいたわけではないのに。まわりの誰にも死んで欲しくないのに。
しかし、いーちゃんの周りでは必然のごとく死が訪れます。それも不慮の殺人による死ばかり。今回も、とある山中の研究所でのアルバイトに出向いた彼の友達、そして研究所員、その日そこにいた全員がすーちゃんが朝起きてみると全員死んでいるという事態に発展します。さきに挙げた匂宮理澄も含めて全員。
自我が完全崩壊に直面するようなそんな状況下から、彼はどう動くのか。そして狐面の男は? 次作への大掛かりなオープニングでもあるかのようなこの作品で物語は大きく動いていきます。
- 作者: 西尾維新,take
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/07/05
- メディア: 新書
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