小説・漫画好きの感想ブログ

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「バスルームから気合いを込めて」 ジャネット・イヴァノヴィッチ著


 版元を変えて再開したステファニー・プラムシリーズの第二弾。
 今回は主人公のステファニーが、いきなりバウンティハンターを辞めるところから幕をあけてびっくり。
 トラブル体質で、なおかつ人を撃てないステフは、確かにもともとがバウンティハンターには向いてません。いつもいつもイカれた変質者や殺人犯に命を狙われ、愛車もいつもいもつ誰かに燃やされたり爆破されたりの災厄続きで一年と乗れたためしもなく、なおかつ犯人逮捕や拘束に失敗しては生ゴミの中を転がる羽目になっているのが彼女の毎日です。ふと自分の人生を振り返ってみて彼女は愕然とします。そして、よし、辞めてやるんだ! と勢い勇んで仕事を辞めるんですが、、、バウンティハンターをやっていようがいまいが、彼女のもとにはトラブルが続き途切れることはありません。辞めたはずなのに、元助手のルーラの手伝いで結局はバウンティハンターまがいのことをやっていますし、シリーズの初期でやりあった殺人犯につけまわされ命を狙われる羽目になります。。。
 てなことで、ある意味シリーズがマンネリになってきました。
 どうしたんでしょうか。ちょっとここ数巻面白さがトーンダウンしているような気がします。まぁ、救いはその面白くなくなってきた理由がハッキリしていることなんですが、、、果たして本国アメリカではそれがマイナス要素として受け取られているか、つまりはそれを改善しようという動きが働くのかという事についてはちょっと疑問なだけに心配です。
 というのも、その面白くなくなった理由はといえば、主人公のステフが、明らかにハーレクインロマンス的な「男性に溺愛される、どんなピンチも結局はかっこいい男が助けてくれる、そして情熱的に愛される」主人公になってしまっているからです。今までも主人公のステフには、好意を、もしくは性欲をもって近づいてくる男たちが出て来ました。主役級の二人の人物がそうでした。でも、ステフはそのどちらともそんなにべったりではなく、自分のプライドや意地を優先させて、一線をある程度は守っていました。しかし、ここ数巻は、相手の溺愛度が増したせいもあり、なんでもありだし、どちらといるときもすぐにべったり発情モードに入ってしまいます。このあたりがねぇ、ひょっとしたら自分が男性読者だからかも知れないけれど、どうにも物足りないというか喰い足りないというか話にのめりこめない原因なんだろうなぁと思います。そして、その原因は、もともとがこのジャネット・イヴァノヴィッチという作者がそちら系で人気を博した人だし、今でもそちらでのファンが強いということを考えると今後もエスカレートしていきそうで、、そのあたりがどうにもです。そして、その部分がどうも、ミステリものとしてのキモである犯人探しや謎解きに自分の力でぶつかっていくというスタイルを阻害し、プロットや主人公の謎解き過程の描写を削ることにも繋がっているようなんです。
 言ってみれば、探偵ものの構造として、「主人公(女性)が二人のかっこいいスーパーマン(しかも刑事と非合法なハンターという両極に危険な男)に愛され、いつも助けてもらいながら事件を解決する」というのが面白いミステリになるかどうかというところなんですけれど、僕にはどうも疑問なんですよね。ラブロマンスがあったっていいし、このシリーズのもう一つの特徴である濃い〜家族というネタはそれでいいと思うんだけれど、あくまでこのシリーズはミステリだという事を考えるとこの構造で行くと絶対にミステリとして面白くないものになってしまいそうだし、ステファニーの魅力が逆になくなっちゃうような気がするんですよね。
 けれど、ハーレクインロマンス的なものが好きな人の支持が圧倒的に高いと、、、むむむむ、、です。よりそっち方面に強化されそうでむしろ怖いくらいです。とんでもなくドジでバウンティハンターとしてはダメダメだけれど、それでも一生懸命事件の解決や仕事に命かけて頑張ってるステファニーのほうがかっこいいし面白いと思うんだけれどなぁ。。。。