小説・漫画好きの感想ブログ

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「ぶっせん」(下) 三宅乱丈著

 先日紹介した「ぶっせん」の下巻、三作組の最終巻です。
 ギャグ漫画でありながら、最後のこの巻は皆が一年間一緒にいたお寺から卒業するということで柄にもなく感動してしまいました。あいかわらずギャグの切れはいいし、ところどころに散りばめられた宗教系(特に禅宗曹洞宗系統)のネタは笑わせてくれます。なのに、前作同様、今回もあれこれと考えさせられる部分は考えさせられてくれるし、ほろりとくるところはほろりとさせてくれます。
 例えば作中で、9枚目のざぶとんというエピソードが出てくるのですが、これには感動します。どんなエピソードかというと、この男子校のぶっせん(一人男装の女の子もいるが)は、唯一のおばあちゃん生徒のおキクさんも含めて9人の生徒がいます。しかし、座布団は寺に8枚しかありません。なので、誰かは座布団に座れないはずなのですが、キクおばあちゃんがいつも最後に座布団を取りにいくと必ず最後の座布団があります。それをおキクさんは気にしていたのですが、実は全員がそれと打ち合わせをしていたわけではないのですが、自分が8毎目の座布団にあたるときはキクおばあちゃんの為に自分の座布団を取っていなかったのです。こういう阿吽の呼吸がいつの間にか彼らには芽生えていたのです。
 普段は馬鹿ばっかりやっているし、教師の一人はキャバクラに入り浸っているし、和尚は寺を売ってタヒチに行こうとばかりするし、というような無茶な連中のハチャメチャギャグ漫画なので、ときどきそんなことで感動させてくれたりします。なので、絵柄が汚いので女子向けではない漫画なのですが、また再評価されるといいなと思う漫画です。