「サイコロジカル(下) 曳かれ者の小唄」 西尾維新著
少し前に上巻のレビューだけして置いておいてしまったので、続きを。
前巻までで、愛知県山中のマッドサイエンティストの研究所を訪ねていた主人公達一行は友人の奪回を果たせぬままに、その友人の無惨な遺体(しかも山中の陸の孤島での、しかも密室殺人という不可思議な状況)を前に全員が虜囚の憂き目を見ることとなった。
果たして誰が、ディープブルーの友人たる兎吊木垓輔を殺したのか。
その目的は。密室殺人のトリックは。果たしていーちゃんと玖渚友の運命はいかに。という後半。見事なまでにトリックとしては見事で、フェアで、一段階きちんと解答を出したかに見えて、伏線がきちんと回収されたと見せて、それでいてその上の更に大どんでん返しがありきちんと小説として成り立ち、次回以降に繋いでいく。きちんとミステリとしてよく出来ておりました。西尾維新、ライトノベルの代表格ということで食わず嫌いでおりましたが、面白いです。
さて、ここまで書いてきて思ったんですけれど、西尾維新、スタイルや文章、主人公の語り口、言葉の冗舌さと韻を踏んだ駄洒落とレトリックなど、表面上はまったく違うんだけれど、小説のコアにあるどうしようもないほどの確固とした書き手の強さと手法的には、実は森博嗣の作品(特にVシリーズ)に似ているのではないかと思うのですがいかがでしょう。
表面的にはどちらのファンも敵にまわしかねないんですが、でも、キャラがきちんと特殊な人格としてなりたっていて、それでいてミステリとしてフェアで、そのキャラマの賢さという特殊性のバランスが非常によくて、それぞれが自分の目的や価値観のためには周囲の常識などまったく関係がないという態度を見せているあたり、よく似ているんじゃないかと思います。
そんなわけで、この下巻から読む人はいないでしょうから、二巻組になりますけれどこれは全巻までを読んだ人なら迷わず読んで間違いないでしょう。
- 作者: 西尾維新,take
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/11/07
- メディア: 新書
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