小説・漫画好きの感想ブログ

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「黎明の星(下)」 ジェイムズ・P・ホーガン著

 「黎明の星」の続編にあたるジェイムズ・P・ホーガンの新作の下巻です。
 前半では、カタストロフィ後の地球と土星衛星上の二つで話が進んでいたんですが、結局、この下巻では地球上でのクロニア的な政治制度と旧地球の政治勢力との軍事的なぶつかりに話が絞られ矮小化してしまいました。  
 このへん非常に残念。
 迷信を嫌い科学的知識によって世界を切り拓いていく人間的な科学者たちと、権力と支配欲にまみれた政治家や軍人たちとが対立して行く中で物語が進んでいくというパターンは最近のホーガンのメインテーマに沿ったもので、ある程度は織り込み済みでした。しかしこの「黎明の星」では、地球文明がほぼ崩壊してしまったという舞台設定から、政治的なテーマで新機軸が生まれたり、彗星の移動によって一度は滅亡した地球文明がどうなっていくかといった物語展開になるのかなと期待していたのですが、最終的には軍事力の衝突ですから。ネタバレしてしまうから最終的なとこまでは書けませんが、軍人達に圧倒的戦力差で追い込まれる主人公の最後の反攻作戦もなんというかいまひとつ盛り上がりに欠け、今までのホーガン作品と比べるとかなりパワーダウンは否めません。
 この作品、「揺籃の星」、本書、そして次書の三部作になっているようですが、どうも先行きに希望が持てません。

黎明の星 下 (創元SF文庫 ホ 1-26)

黎明の星 下 (創元SF文庫 ホ 1-26)