小説・漫画好きの感想ブログ

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「少女には向かない職業」桜庭一樹著


 直木賞受賞で完全にブレイクした桜庭さんの本です。
 この方の本は、これが初読みでしたが、素直に面白かったので他のも少しずつ読んでいこうかと思います。
 「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人を殺しました」
 そんな衝撃的な独白で幕を開ける物語は、この葵という少女と、クラスメートの宮乃下静香という少女の二人の物語です。彼女達は夏休みがくるまでにお互いをそれと意識したこともないくらい、まったく親しくもなかったのですが、ある事がきっかけで急速に仲良くなり、そして二人で殺人を犯してしまいます。果たしてどんな経緯で、どんな目的で、どうやって少女が殺人を犯すのか。それは読んでいただくしかないですが、この作品、どうぞ最後まで読んで下さい。 
 というのも、途中まではいかにもな少女ものなので、人によっては投げたくなるかも知れませんので。たぶん、好みの問題ではあるのですけれど、こういう少女特有の心の動きとかが苦手だという人の話もよく聞くのであえて書いておきますが、もしそうでも最後まで読んで下さい。
 途中まではこの小説、わりあいとオーソドックスなジュヴィナル小説というかライトノベル的な雰囲気で、少女期毒との屈託や親への反抗(彼女の場合は、「大人は誰もわかってくれない」という言葉の裏にそれだけの重い生活があるのだけれど)を描いていくのですが、それが後半からまた一段違うミステリ物語へと変貌していくからです。一粒で二度美味しいというか、前段後段で二つの小説を味わっているかのようなそんな感覚が味わえます。連続しているんだけれど、二つの味わいがここには同居しています。
 中学生には中学生だからこそ感じる、そして逃げようのない苛立ちやそれをはねのけるだけの力がもてないことへの苛立ちが確かにあります。自分たちがかつてそうだった地点というのをくっきりと思い出させてくれる描写を著者は丹念にしていきます。シリアスな物語の中でも、それでも学校での友達づきあいがだらだらと続いたり、仲間うちでのつきあい方に一喜一憂したりといった今どきの現実をきちんと描いてくれます。だからこそ、そんな中でこの女の子たち二人がやらざるを得なかった、自分というものを肉体的にも精神的にも守る為にやったことを、ストレートに自分が中学生のときだったらという気持ちで読む事ができますし、たぶんある部分ではなんだかわからないけど感動したり応援したくなったりすると思います。
 内容に触れてしまうのでこれ以上書けませんが、表面的な謎解きや日常と非日常のアンバランスを楽しむというよりは、少女特有の世界、彼女達から見た世界でしかありませんが、そういうものを感じて自分の気持ちがあっちこっちへさまようのを楽しむような物語です。
 。。。今回のレビューは自分的にもうまく伝わらないだろうなぁ、、、というのがよくわかっていますが、本当にまぁ「とにかく読んでみて。そしたらわかるから」というお話です。でも、ひょっとすると女性が感じるものと男性が感じるものは全然違うかも、と思わせる小説でもありました。

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

少女には向かない職業 (創元推理文庫)