小説・漫画好きの感想ブログ

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「ネコ語がわかる本」 石川利昭著

 「ネコ語がわかる本」。タイトルのつかみは100店満点の一冊です。
 石川さんというのは、ムツゴロウ動物王国で長年働いていた人で、チャトランを主人(猫?)公とした「子猫物語」という作品で大活躍した方です。そういう人の本だけに、タイトルの「ネコ語がわかる」というキャッチコピーにもそこそこの期待はしていいのじゃないかと思い、ついつい買ってしまいました。
 でも、結論から言ってしまうと、うん、まぁぼちぼち新発見はあったんだけれど「ネコ語がわかる本」というタイトルは誇大広告に過ぎるんじゃないかなぁという気がします。作品内容を一言でいうと、「ネコの飼育マニュアルに書いてあることは大きく違うぞ」「学者さんの言っていることと実際のネコたちの現実とは大きな隔たりがあるぞ」ということ。
 例えば、たいていの本にはキャットフード以外のものを与えてはいけません。人間の食べ物は塩分がたくさん入っているので、あげるとネコの健康に悪いので良くないと書いてあるけれど、そうした副食的なものがネコと人間の食べる楽しみを増やし双方の健康にもいい。本当に塩分が多いならかつての日本のネコはみんな肝臓がいかれて死んでいた筈でナンセンスだと反論します。また、別のことでいえば、多くの飼育書に書いてあるエサの時間を決めて食べ過ぎさせないようにというのに大して、ネコは食べ過ぎるということができない小食多食の喰い溜めが出来ない生き物だから、エサは24時間いつでも置いておきなさいとのご意見。他にも、飼育書の一般常識に対して、アンチを唱えている部分が多いです。 
 確かに1300匹のネコと暮らした方の言葉ですから、やはり重みは経験に裏打ちされた言葉として尊重したいのですが、結構世の中にはデブ猫も溢れていますし、人間の食べ物を与えて病気になる猫も結構いますから、どちらに振れても、過ぎたるは及ばざるがごとしという事なのでしょうかねぇ。
 ただ、この本の中で一つ「なるほど」と目から鱗が落ちたことが一つあって、それはどんな種類の猫も「家猫」という一つの種類の生き物であって、それは他のどんな動物としも違うものだという説明です。
 どういうことかといえば、他の生き物、例えば犬などであればチワワからグレートマスチフまで、その用途や目的にあわせて何倍ものサイズの大きさの違いや生態の違いが出てきますが、猫だけは世界中のどの猫でも、だいたいのサイズや頭の大きさ、身体の骨格は同じで、仕草や親愛の表現などは全部同じだということです。和ネコでもマンクスでもアメリカンショートヘアーでもベルシャでも、ロシアンブルーでも、スコッティッシュフォールドでも、アビシニアンでも、キジ虎でも、全部同じ「家ネコ」だということです。確かにそれは言われてみればそうで、彼ら彼女らは家にいて、野生ネコでは見られない平常時でも相手を見ては鳴くという独特の言葉を操る生き物だということです。
 そのことには、なるほどと思わされました。犬なんかだと犬種によってはフリスビーだったりボールだったり遊び道具も違ったりするけれど、ネコは世界のどんな家ネコにも猫じゃらしが有効でどんな文化にもそれがあるというのはなかなか新鮮な発見でしたね。 
 だから、言葉がわかる、というタイトルにはちょっとだまされたものの、ネコ好きによるネコ好きの人の為の本としてはまずまず楽しめる読み物に仕上がっているんじゃないかなと思います。

ネコ語がわかる本 (学研新書)

ネコ語がわかる本 (学研新書)