小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「江戸の子守唄 御宿かわせみ2」平岩弓枝著


 江戸町奉行所勤めの同心の弟で、今は無役で部屋住みの身の神林「東吾」と、元奉行所同心の娘でいまや宿屋の女将となった「るい」の捕物帳の第二弾です。
 一ヶ月ほど前に前作を読んだときにも、一編ずつの短さと読みやすさに感じ入りましたが、今回もその印象は変わらずで、楽しく読めました。今回は、裏テーマといっていいのでしょうか、親子の情愛、特に育ての親と生みの親に絡んだような話が多くて、長編にしたらかえって重くてやるせないような話が上手く纏まっていて、さらりさらりと読んでしまいました。
 感覚としては、読んでしまったというより、さらりさらりと読めてしまったという感じ。
 ストーリーの本筋とは違うんですけれど、これほど読みやすくて口当たりのよい、まるで切れのよい日本酒のような短編集はいまだかつてなかったようにさえ思いました。池波正太郎先生の「剣客商売」というシリーズも連作短編集で読みやすく、それでいてとても味わい深かったけれど、ここまでするするとした読みやすさはなかったように思います。良くも悪くもこれはもう職人芸ですね。
 ただ、読みやすいが故に,逆にちょっと気になったのは作中で流れる時間の速さ。前作、第一巻で主人公たちはわりない仲になってはや二年目だったわけですが、今作では作品の中でものすごくあっさりと時間は流れ、主人公達はもう既に足掛け五年の関係が続いていることになっています。あまりに速いです。
 数十巻もどうやって話をもたせているのだろうと、さきゆきが不思議になったりするのですが(もしかして裏技的に「御宿かわせみ」の舞台そのものが主役ということで、主人公たちが後退したり世代交替したりとか、、「ペリー・ローダン」じゃないし、まさかね。巻が変わると「あれから250年」なんてとんでもない事言わないよね、まさか)、まぁそうなったらそれはそれで楽しみかな。あと、これはまぁたぶんにツッコミ的な見方なのかも知れないけれど、五年もつきあっているというのに、主人公たち二人のあつあつぶりはもの凄いです。元は問題なかったけれど、今は身分違いの恋ということもあって表立って一緒に暮らす事ができないからそうなるのか、それとももともとの二人の資質故なのか、いつまでもこの二人は甘くて熱いです。
 

江戸の子守唄―御宿かわせみ 2 (文春文庫)

江戸の子守唄―御宿かわせみ 2 (文春文庫)