「イタリアでうっかりプロ野球選手になっちゃいました」八木虎造著
基本的にはルポ。なんだけれど、これが笑える日記風になっていて面白かったです。
もともとは、ひたすらがむしゃらに仕事を続けるハードなプロカメラマンだった筈の著者。しかし、身体を壊してでも続けてしまう自分の仕事に疑問を感じ、いったん休暇を取って身体を休めようとして旅立ったイタリアで彼はなんとブロの野球選手になってしまうのです。
そもそもの始まりからしてそうなんだけれど、著者の八木さんは勘違いだったり、軽いノリですすめていった事が人生の大きな分岐点になってしまうタイプの人で、イタリアへの一年程度の休暇滞在も、日本の喧噪を離れて暮らそうと彼女と約束していた筈が、いざ現地の滞在先も決め、仕事も辞めて彼女に伝えたら「冗談だと思っていた」と言われて、結局は一人で行くことになったり。心が壊れかけての一時非難的な海外脱出のはずが、言葉も話せない、知り合いもいない、やることもない、ホームシックだけが激烈にくる、そんな状況に追い込まれノイローゼの一歩手前までいったり、とあまりに悲惨で笑っちゃいけないんだけれど可哀想すぎ。
しかし。何が幸いするかわからないもんで、少年時代はリトルリーグにいたということもあって、草野球か何かでもしようか、どうせイタリアの野球レベルなんてたいしたことないだろうし、入れてもらえるだろうとチームに赴いてみれば、いきなり試験だなんだとかいわれて契約書をかかされる。イタリア語がわかっていないから、どうせ怪我したときのこととか何か書くものだと思っていたら、実はこれがイタリアのプロチームだった。まぁ、つまり彼は何も知らないままに、日本でいえば阪神タイガースの事務所に行き、なんだかわからないうちにプロテストを受け、合格し二軍選手登録してしまったというような状態です。
しかも、彼はシーズン終了後に、日本に一時帰国するときまで、全然自分がプロになったという自覚がなく、お給料(年棒ですね)をもらってから初めて自分がプロ選手だったということに気がつくという、、、まぁ天然な人です。
その彼のイタリアはシチリアチームでの奮闘記がこの本です。泣いたり笑ったり、イタリアのプロ野球(ちゃんとセリアAやセリアCまである)の一試合平均5時間は越える無茶苦茶っぷりが出て来たりと読みどころも満載。途中、オーナーの娘さんで日本マニアで、アニメのワンピースが大好きな女の子などが出て来たりと別要素で笑わせるツボもあったり、大満足な一冊でした。
- 作者: 八木虎造
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/11/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
追記:「八木」ときいて、代打の神様の八木を思い浮かべましたが、阪神の八木選手とは特に関係ありません。念のため。