小説・漫画好きの感想ブログ

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「スティーブ・ジョブズ 神の交渉力」竹内一正著

 マッキントッシュを使う人と、そうでない人。windowsパソコンを使う人とマックOSを使う人。よく言われる話だけれど、この両者は明らかに人種が違うらしい。職場で使うのでもなければ(あるいは職場で使うにしても)、どちらもワードとかエクセルとかファイルメーカー、もしくはITunesを使ったりするから、本当はどちらでもいいはずなのに、そうはならない。これについては、それぞれが犬派猫派のように自己弁護や擁護論が山ほど出てくるんだけれど、ここではその話は割愛。
 本書で取り上げるのは、マックの生みの親にして、今でいえばiPodの生みの親、スティープ・ジョブスその人の軌跡。それも、どちらかといえば裏の顔のほうを中心に、彼がいかにわがままで自分勝手で、いかに要領がよく厚顔無恥で人非人で、さらにまた人の手柄を横取りして恩を仇で返す無茶苦茶な人間であるかということが、微に入り細に入り描かれています。ここまで書くかという気もしますが、ここで取りあげられているエピソードの一つでも本当なら、かなりまぁ正直つきあいたくない人ですから、まぁたぶん本当にいやな人なんだとは思います。
 でも、そのエネルギーの激しさ、一つの物事に対する徹底的なこだわり、自分とあわない人間は全て敵、敵とみなした瞬間に完全に存在の痕跡すら社会的に抹消してしまう極端さ、こういうのがないとあれほどの事を成し遂げるのは難しいんでしょうし、その時期その時期だけであれ彼と組んだ人間がその仕事には賛辞を惜しまないとこを見ると、素晴らしくできる人でもあるんでしょうね。
 カルロス・ゴーンや、ドラッカーなんかのビジネス書とは違って、絶対に真似ができる人がいないだろうという部分(したくても僕はできないというかやりたくない)からしてビジネス書として詠まずに、マッキントッシュという類いまれなオンリーワンマシーンをもって、世界のパソコンの概念を本当に根底から作り替えた男の一代記として読んでみてもらうべきかなと思います。
 パソコンに多少なりとも興味がある人なら、特にマッキントッシュを使っている人ならたぶん面白く読めるだろうと思います(特に、契約社会のアメリカ・ハリウッドで契約書があるにも関わらず、ディズニーをやりこめてディズニーの首をすげ替えてしまうくだりは痛快です)。