小説・漫画好きの感想ブログ

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「地中海の海賊」 リンゼイ・ディヴィス著

  密偵ファルコシリーズの最新刊です。
 ウェパヌアシス帝の時代ということで、世の中は表向きはいたって平和にパックス・ロマーナを満喫しています。が、当然のことながら、奴隷たちも入れば、ローマ時代のことですから、ローマ市民権をもたないものの扱いはかなりひどいものです。ポンペイウスの時代に公式にはいなくなった筈の海賊達は今でもしっかりと活動中です。
 主人公のマルクスは、奥さんと一緒にローマ近郊の最大の港町のオスティアに行方不明になった日報記者を探しにきますが、そこでその海賊達がやっているとおぼしき誘拐騒動に巻き込まれます。親友で、いまは姉のマイアと深い仲になっている警備隊員のペトロニウス・ロングも絡んでの大冒険は、なかなか全貌が見えずにマルクスは今回もまた街をあっちへいったりこっちへいったり殴り倒されたり猿ぐつわをかまされて連れて行かれたりと危険な目にばかりあっています。
 このファルコシリーズ、今更ながら思うのだけれど、フィリップ・マーロウと同じ系譜のハードボイルド路線にいるからか、けっこう捕まったり犯人と何度もやりあったりと大変です。気がついてみればだけれど、最近はこういうタイプのミステリーって珍しいですよね。
 加えて、このファルコシリーズ、今回もそうなんですが家族のつながりがテーマになっているので、母親や、別居中の父親、たくさんの姉妹達とその旦那たちに叔父達、はてには妻の親達までもが普通に絡んできます。なので、そのぶん、事件そのものに対する謎解きや緊迫感漂うストーリーという部分は薄れていて、シリーズをここから読む人にとってはちょっと敷居が高い作品になっているなと感じます。
 自分もそうですが、ずっとこのシリーズを読んでいる人には面白いのですが、そうでない人にはどうかなと今作は思いました。

地中海の海賊 (光文社文庫)

地中海の海賊 (光文社文庫)